江戸を舞台に主人公の澪が次々に起こる不遇な出来事にも負けず、創意と工夫でおいしく心温まる料理を生み出し、料理人として成長していくお話。
なんといっても澪を囲む人々がいい。凛としたたたずまいのご寮さん。情に厚いおりょうさん。長年、仕事をしてきて一本筋の通ったりうさん。機転のきくかわいらしいふきちゃん。女性だけでも、多様な人々を描き、場面ごとにはっとさせられる言葉を紡ぎだす。
それに加えて料理の描写は、湯気や店の中にたちこめるにおい、、食欲をそそる見栄え、食べる人のうっとりした顔が目に浮かぶ。江戸には、このような豊かな味わいのする食事があったのか?と驚き、現代のそれと比べてしまう。
ところで、文中に出てくる「こぼれ梅」というものは作者が作った言葉なのかとずっと思っていたけれど、今年知人から「こぼれ梅」(みりん粕のこと)を頂戴し、実在するものであることを知った。文中では「そのままお茶うけにいただく」とのこと。食べてみると確かに甘く、酒粕ほどアルコールを強く感じることもなくおいしい。私が食べたものは、見た目はしっとりしたおからのようで、ほろほろしている。調子に乗って食べると、酔ってしまいそうだった。
このところ、「塩こうじ」が流行り、発酵食品ブームなので、案外ひっそりと身近なところにあるかもしれません。混ぜて焼くだけのケーキに入れてもおいしく、いつまでもしっとりしていましたよ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
高田 郁
- 感想投稿日 : 2012年10月20日
- 読了日 : 2011年4月23日
- 本棚登録日 : 2012年9月9日
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