みをつくし料理帖シリーズも第9弾となり、いよいよ次は最終巻とのこと。
巻末の既刊本紹介のページを読めば、それぞれの本には『追憶』『覚悟』『転機』『悲涙』『決意』といった言葉が添えられている。澪の過ごしてきた日々には想像を絶するような辛いことも多く、よくぞここまで乗り越えてきたと思わずにいられない。
ただ耐えるばかりではない。厳しく哀しい現実の中でも、心を和ませてくれる小さな喜びを見出して、困難を乗り越えて人生の糧とする。
凛として潔く、しなやかで逞しい。
そんな澪を支え共に喜びや哀しみを分かち合ってきた周りの人々との暮らしを読むことができるのも、あとわずか。
きっと何か嬉しい結末が待っていると信じているけれど、
早く先が読みたいと思うけれど、
寂しくなるなあ・・・。
さて、本書ではご寮さんが老舗の料亭・一柳の主人に嫁ぐことを決意し、「つる家」の面々と寿ぎの日を迎えるまでいつもと変わらない毎日を丁寧に過ごしていく。
思い出されることはあれこれあるけれど、ご寮さんの幸せを精一杯願って、笑顔で送り出そうとするさまが愛おしくてならない。
いよいよ終盤ということで、澪の進もうとする料理人としての道も見通しが立ち、ご寮さんの息子の再起も匂わされ、あさひ太夫の身請けに奔走する澪にも一筋の光が・・・。
それぞれの話に中心となる人物はいるが、周りの登場人物に起こる変化もきちんと書かれていて、奥行きのある人情味豊かな話を堪能できた。
坂村堂の食事シーンは、いつ読んでもおいしそうに味わう姿が目に浮かぶ。季節の食材を豊かな風味の出汁や出会いのものと一緒に調理し、相手の喜ぶ顔を想像しながら提供する。
確かに、澪の料理は一貫しておいしく値打ちな旬のものを、食べる人の身になって料理する。今までは職人のように、そのことだけを考えて仕事をしていたように見えたが、ゆるぎない芯がはっきりしてよい意味でのしたたかさも身につけたようだ。
その彼女を遠くから見守り、意図せず考えを整理し明らかにしてくれる源斉先生。
この人もずいぶん、存在感が増してきました。
レビューを書きながら、ここまでのストーリーを思い出していてふいに思う。
私たちの毎日は昨日と同じ様でありながら、異なる今日を生きている。
そういう日々を重ねて、1年、2年と過ぎていき振り返ってみれば、
追憶やら覚悟、悲涙や決意があり、
あああれが転機だったと思うこともある。
澪ほど過酷な人生ではないにせよ、我々にも何かしら、記憶に深く刻まれることが起こっている。
今まで本の中の皆がゆっくりと立ち上がり前を向いて歩いていく姿に励まされてきました。
新刊が出るのを待ちながら、友人たちと感想を話して楽しんできましたし、
本の楽しみ方もずい分広がりました。
私にとって、これからも大切にしたいシリーズなのです。
- 感想投稿日 : 2014年5月25日
- 読了日 : 2014年5月22日
- 本棚登録日 : 2014年5月22日
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