朝日新聞が識者120人のアンケートによって「平成の30冊」を選んだそうな。
“識者”というのが曲者で、どうしてこう小難しそうなものが並ぶのだろうと思ったが、その中から4位タイに並んだエンタメ系と思しき2冊をTSUTAYAで買い、まずはこの本から読み始める。
甥から失踪した婚約者探しを頼まれた休職中の刑事・本間。
調べを進める内に、頼まれて探している「関根彰子」は本当の「関根彰子」ではないことが明らかになり、もはや甥の依頼とは関係なく真偽二人の「関根彰子」を追っていく。
本間が行く先々で当たる人々が悉く有益な情報をもたらしてくれるのがうまく行き過ぎで、個人情報保護法が行き渡った今ならとてもこうはいかないと思うが、そこらには目をつぶるとして、結構面白く読めた。
本間が自分でどうしてこの事案を追うのかと自問する場面があるが、その時結論付けたように、登場人物にも読者にも共通してあるのは”好奇心”なんだろうか。色んな人のつながりを手繰り、「新城喬子」に辿り着く。
そこにあったのは、借金地獄の悲惨。そして、自分の身に降りかかったことを、歪んだ形でしか外に向けて清算出来ない人の哀しさ。
前半語られる「関根彰子」の生涯も憐れだが、後半明らかになる「新城喬子」の人生の凄惨さも哀れ。
物語が解きほぐれかけてからも、様々な”何故””どうやって”は残ったまま、最後にはきれいに回収されて見事な収束。
確かに本間同様に、「新城喬子」がひそかに積み上げてきた話を聞いてみたいと思わせる終景に余韻あり。
小難しそうなラインアップからエンタメ系を選んだつもりだったが、これも結構社会派だったのだった。
- 感想投稿日 : 2019年3月16日
- 読了日 : 2019年3月14日
- 本棚登録日 : 2019年3月16日
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