リアルのゆくえ──おたく/オタクはどう生きるか (講談社現代新書)

  • 講談社 (2008年8月19日発売)
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本棚登録 : 629
感想 : 59
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東浩紀氏の「動物化するポストモダン」、「ゲーム的リアリズムの誕生」を読んだ上でさらにコンテンツの本質に近づきたくて購入。本書は、東氏が「動物化〜」や「ゲーム的〜」の論の元として挙げる大塚英志氏との対談。今までで最も読みやすい一冊だった。その理由は、渡井が東氏のこれまでの著書やメディア・Twitterでの発信を自分なりに整理しかけた上で開いたこともあるが、本書の対談形式が大きい。大塚氏が執拗にツッコミ→東氏が応戦、という図が自然に論を左右に振ることで読者に分かりやすく読ませている。私は、2人の主張のポイントや違いがかなりクリアになり、これまでの東氏の著書の解説本のような感じで読めた。2人の対談はスタンスの違いが興味深い。大塚氏はとにかく東氏に議論をしかけ、自分のフレームワークに当てはめようとし、さらに東氏の論を昇華させようとしている風に見える。対して東氏は、大塚氏と積極的に議論する気はない。自分の論を発信し、それに対して批判する大塚氏に応戦しているようだ。大塚氏の主張の傾向の印象は、主体的な権力、公的、そもそもの議論をしたい、批評家としての責任感。東氏の傾向の印象はシステム的な権力、今そこにある具体的で個人に関わりの深い問題、気負いすぎずに自分がどうするか。2人の対談は回を増すごとにヒートアップし、全4回の3回目は特に大塚氏の攻撃が激しく、東氏も「人格攻撃では」と不快感を露にしている。だが、全体を通してみて、大塚氏はあえてそういう議論を仕掛け、そうすることでしかお互いの進化はないと考えているかのようだ。東氏も、それを受け止めつつも自分のスタンスを貫いているかのようだ。大塚氏は、世代を代表して議論をしかけているのかもしれない。初めから東氏寄りで読み始めた私も、大塚氏が仕掛ける論戦を通してより東氏の主張や、本質について理解を深めることができた気がする。引用箇所も多く濃厚で読んで良かった一冊。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文庫
感想投稿日 : 2011年1月3日
読了日 : 2011年1月2日
本棚登録日 : 2010年12月30日

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