作家の北村薫氏が編纂したアンソロジー。巻末に載っている宮部みゆきとの対談も面白い。
以下、印象に残った作品。

『七階』『待っていたのは』ディーノ・ブッツアーティー
不条理劇。安倍工房に似てるけど、彼の作品よりリアルな恐怖。最初はまあ許せる範囲の嫌なことがだんだん冗談じゃ済まない感じになっていくさまが上手い

『懐かしき我が家』ジーン・リース
少女がかつて住んでいた家を訪ねてみると、庭先で現住民の子供たちが遊んでいる。彼らに声をかけるが……。短い話だし、ありがちなオチでもあるんだけど、書き方が良かった

『やさしいお願い』樹下太郎
交通事故で死なせた相手の母親から、賠償金は一切いらないから一つだけきいてくれと言われた願い事。それは瑣末なことなのだが、5年と経たず、守れなくなっていき……。怖い。けど、母親の気持ちもよくわかる

『どなたをお望み?』ヘンリィ・スレッサー
私の好きなエリンと似た作風の作家かな。この人たぶん嫌われてるだろうな〜と読みながら思っていると、あんのじょうなオチ。でも面白い。「だよね」って苦笑いをする感じ

『避暑地の出来事』アン・ウォルシュ
心機一転、山奥の山荘に引っ越してきた母娘3人。近所にある廃屋を見つけた母親は夜中の饗宴を目撃する……。いや〜、じわじわ怖く描くのかと思ったら、最後に急にきたね

『ねずみ狩り』ヘンリィ・カットナー
墓守の男がねずみ退治に狭い穴を追いかけてみれば……。この男は実は墓荒らしでもあり、先にねずみに獲物(遺体の金歯など)を持っていかれた怒りで後先考えずに進んでしまうという設定が細かいけどちゃんとしてると思った。説得力って大事。閉所恐怖症の人は読まない方がいい

『死者のポケットの中には』ジャック・フィニィ
大事なメモが窓の外に飛んでいって、しかも壁の隙間に引っかかって落ちそうもない。足をかける場所はわずかにあるし、壁づたいに行けば取れるかもと軽い気持ちで取りに行った主人公の恐怖の数分間。手に汗握る描写力はさすが。これも奥さんが映画を見に行っちゃって三時間は帰ってこないとか、窓が硬くて開けづらいとか、舞台が整ってる。こちらは高所恐怖症の人は読まない方がいい(笑)

『ナツメグの味』ジョン・コリア
転勤してきた少し神経質な男がじつは以前殺人事件の容疑者として起訴までされていたことがわかる。確かに男と被害者の二人きりの状況で起きた殺人であるが、男と被害者の関係は良好で動機もないと言うことで、結局無罪判決が下ったのだ。主人公たちも「ひどい目にあったなぁ〜」と同情していたが、ナツメグ入りのお酒を作り始めた男の態度が一変し……。「え?そんなことで?」というところにある恐怖

『夏と花火と私の死体』乙一
図書館に返さなきゃいけなくて、結構流して読んだけど、すごいなと思った。これを16歳で書いたのか。描写とか緻密なのにどこか他人事のような乾いた文体は最初からなんだな。
殺された「わたし」が弥生と健の兄妹によって、あちこち移動させられる。その間、何度も大人たちに見つかりそうな危機に瀕し、矛盾しているがハラハラした。そして衝撃のラスト。そうか、そう繋がってくるのか

『価値の問題』C・L・スィーニィ
若く綺麗な妻との浮気相手の若者を人里離れた山荘へ呼び出す夫。まず、この若者、なんでそんな呼び出しに応じるかな(笑)。そして「お前には(妻が離婚しようがしまいが)失うものが何もないのは不公平だ」と言う夫が行動に移したのは……。短いのによく出来てる。ちゃんと選択の余地を残してはいるけど、ま〜、残酷なんですよ(笑)

2020年11月22日

読書状況 読み終わった [2020年12月6日]
カテゴリ ホラー

これのたぶん元と思われる1978年版のワニの豆本(さらに元は1970年版の『世界の怪談集』)。内容は一緒だとして、感想を書く。

世界の怪奇短編を簡易に書き直したもの、実在する(?)呪い、各地怪談、妖怪の紹介……にそれぞれいいイラストがはまっている。
元となった怪奇短編の出典があったのは以下の通り。
『海はさし招く』モニカ・ディケンズ
『猫の影』ロバート・ブロック
『ねずみ狩り』ヘンリー・カットナー
『みどりの想い』ジョン・コリア
『訪問者』『廃墟にて』ロアルド・ダール
『柳』(アルジャーノン?)・ブラックウッド
『小さな殺人者』レイ・ブラッドベリ

はっきり言ってしまうと、内容はいかがわしい(褒め言葉)雰囲気の小中学生が読む怪談本レベル。実際、私も小学生の頃読んだし。当時を懐かしむ気持ちで読めたが、このテの古本が最近異常に高騰して手に入りにくいのはどういうわけか……復刻しても高いし(愚痴か)。

2020年11月28日

読書状況 読み終わった [2020年11月28日]
カテゴリ ホラー

アンソロジー。中には(というか半分近く)経歴不明の無名作家の作品もあった。正直、もっと上手く書けるよなと思う作品もあったけど、バラエティーに富んでいて楽しめる

『終わらない悪夢』ロマン・ガリ
ホロコーストから生き延びたユダヤ人主人公が、かつての収容所仲間とボリビアで再会。だが彼は未だナチの終焉を信じられず、猜疑心の中生きていた。そんな友人が内緒で食料を持ち去り、向かった先は……。人権を蹂躙する所業が人の精神を徹底的に蝕む様を思い知らされる恐ろしい話

『皮コレクター』M・S・ウォデル
これ……いつの作品なんだろう。タイトル通りの猟奇殺人鬼が出て来るんだけど、そこに美学がないというか、B級ホラー映画の趣

『レンズの中の迷宮』ベイジル・コパー
金融業のシャーステッド氏は、金目のものを持っているのに借金をなかなか返済しないジンゴールド氏から今日こそ金をむしり取ろうと豪邸へ赴くが……。情け容赦ない借金取りをファンタジックな方法で罠にかける話なんだけど、やり方はともかくとして、借りたものを返さないのは倫理的にどうかと思う。そしてなんか無駄にだらだら描写が長い

『誕生パーティ』ジョン・バーク
息子ロニーの誕生パーティで大騒ぎする子供たち。母親のアリスは、のけ者のサイモン少年と彼らが何か問題を起こさないか、不安で仕方がない。読んでいる方も何か最後に起こるんだろうなと嫌な予感が拭えない。編者はレイ・ブラッドベリを彷彿とさせると述べているが、私はスタンリィ・エリンの「ロバート」を思い出した

『許されざる者』セプチマス・デール
牧師の父親が若く美しい娘を「性悪め!」とひたすら折檻する嫌な話。娘が最後まで自分が悪いと思っているのも哀しい

『人形使い』アドービ・ジェイムズ
年老いた人形使いが作り出した人形が勝手に動き、彼を慰め、あるいは罵倒し……。幻覚なのか現実なのかよくわからないダークファンタジーとでもいえばいいのか

『蠅のいない日』ジョン・レノン
あのビートルズのジョン・レノンだ。物語というより、詩のような、シュールな話だった

『心臓移植』ロン・ホームズ
主人公の目の前で妻が愛人を撃ち殺すという、ありがちな(?)三角関係の末路なんだけど、主人公が臓器移植を研究している医師というのがミソで、妻に恐ろしい報復をする。ま……それだけ(笑)。リアリティーがなさすぎで、素人の小説みたい

『美しい色』ウィリアム・サンソム
緑に囲まれた厳格そうな元牧師の伯父の家に療養として預けられた主人公。主人公がどんな理由で静養を勧められたのか、読んでいるうちにわかってくるのは、短いのに面白いと思った

『緑の想い』ジョン・コリア
わりと有名な短編。人食い?植物に喰われると、そのまま取り込まれ、顔そっくりな花が咲く。最初は人間としての意識を保っていたのが、だんだんと植物としての反応になっていくのが面白い。

『冷たい手を重ねて』ジョン・D・キーフォーバー
男を破滅に陥れる魅力的な女とそれに振り回される男たちの話。個人的に好きな題材だけど、もっと女がイカレてるともっとよかったかな(笑)

『私の小さなぼうや』エイブラハム・リドリー
どうやら精神的におかしくなってしまったヒロインが屋根裏部屋に閉じ込められている。三歳にもならない幼な子は彼女が落としてしまったせいで顔が歪になってしまった。精神異常の人物の一人称が不気味で良い。最後の夫の一言で今までの異常な幻覚の意味合いがまた変わってくる

『うなる鞭』H・A・マンフッド
犬を使って寸劇をしている嫌われ者の興行主が近所の悪ガキたちにやられるだけの話

『入院患者』リチャード・デイヴィス
私設動物園を作った男の美人の妻が、連れて来られた雄ゴリラに執着...

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2020年11月7日

読書状況 読み終わった [2020年11月21日]
カテゴリ ホラー

都市伝説のちょっといかがわしさを孕む怖さが好きで、なんだかんだそれ系の本を読んでいる。宇佐さんの本もかつて数冊読んだ。この本はその集大成という感じで、遡ること60年代からアメリカで語られ続ける話から、2000年代のネットで流布している話まで載っている。
「死体洗いのバイト」「遊園地の人さらい」「耳たぶから出る白い糸」「下男」「エイズメアリー」「下水道の巨大ワニ」などは有名だから聞いたことのある人も多いと思う。

もちろん全て嘘なのだが、後からそれらをなぞるような実際の事件が発生し、さらに信憑性を与えていくという、「事実と虚偽の逆転現象」についても書かれていて、面白かった。
特徴としては「友達の友達」が「実際に経験した話」という二つのワードが入っていると十中八九作り話なのだが、なぜかそれを信じてしまうのは、時代背景やその時々の人びとの恐怖の対象が巧みに盛り込まれているからだと思った。その証拠に派生していく話も、あまりにリアリティーがないと自然と消滅していくらしい。

2020年11月9日

読書状況 読み終わった [2020年11月9日]
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都市伝説をベースにしたホラーアンソロジー。以下印象に残った作品。

『わが愛しの口裂け女』梶尾真治
病床の父親から明かされる母との馴れ初め。まあタイトルから彼女が口裂け女だったというのは想像つくが、思いの外、切ない話に落としてきた

『コウノトリ』山下定
異国で行方不明となった恋人を探し続ける主人公が辿り着いた真相とは。「だるま女」の話をベースにしているのだが、そこからさらに男にとっての恐怖譚に落とし込んでいる

『怪人撥条足男』北原尚彦
個人的にこのアンソロジーの中で一番面白かった(怖かった)。1870年のロンドンを跋扈する恐怖の怪人を怖いもの知らずの女記者が追う。序盤は新聞社での同僚男性との軽妙なやりとりなどライトミステリ風に楽しく読んでいたらば、後半でバッとひっくり返される。そして生まれ出た新たなる怪物へとつながる(年代的にわかる)ラストに思わず悲鳴

『見るなの本』田中啓文
小学校の図書室にあるという「見るなの本」。それを見つけたいじめられっ子の主人公が本の中の女の子と自分の共通点に驚いていると……。学校にも家庭にも逃げ場がない二人の子供にひたすら鬱々とした気持ちになる。現実の方が虚構より辛いのかもしれない

『名残』斎藤肇
幽霊の側から幽霊としての日々を綴るという不思議な話。それでも孤独ではないということだけでこんなにも色合いが変わるんだな

『悪魔の教室』友成純一
著者らしいエログロ残虐絵巻。少し突き放した描写は筒井康隆みたいな苦笑いを誘う。青春って残酷

『伝説の男』牧野修
知ったかぶりをしている者を見ると間違いを正さずにおけない性分の緒方。彼が会う人ごとに「それは都市伝説だ」と正すうちに、いつしか彼自身が怪異に巻き込まれていく。
最後らしく、有名な都市伝説のオンパレード。ラストまで貫かれていて良かった

2020年8月29日

読書状況 読み終わった [2020年8月29日]
カテゴリ ホラー

仕事で失敗し、アパートを追い出されそうになっていたマーラの元に舞い込んだおいしい話。億万長者が所有する島の管理をする“点灯員(ランプライター)”という仕事だった。税金逃れのために所有する邸宅に住んでいる形跡を示すため、毎日電気とガスを使うだけというもの。それなのに驚くほど破格の給料。しかし一年、その島に拘束され、そこでの厳格な規則に従わねばならない。
多少違和感はあったものの、島での生活は同じ点灯員仲間のジェシーやピエトロと仲良くなり、禁止されているドラッグや酒も楽しんだりしていた。
一方で島の中に残虐な殺戮者が存在し、遠くから彼らを観察していたのだった……

「おいしい話には裏がある」な始まりかたから、島には殺人鬼がいることがわかって、マーラたちといつ対峙するんだろうという興味で読み進めていくと、とんでもない結末が待っている。
ホラーなんだけど……ただのスラッシャーではないと言っておく(笑)。たしかにグロいし、人体破壊描写も容赦ない。けれども、ここまでいくと、もうマンガ的というか、個人的には怖くはなかった。

あとこの著者は映画の脚本や監督を手がけたキャリアがあると聞いて納得。文章が映画みたい。一つのエピソードの中で複数の視点(心情)が次々描かれて、若干混乱する。映画ならば複数のカメラで各登場人物を同時に撮ってる感じと言えばいいのか……。生意気なことを言わせてもらうと小説としては読みづらさを感じた。
でもブラムストーカー賞ノミネート作品らしいから……訳者のせいだろうか(失礼)。

2020年3月22日

読書状況 読み終わった [2020年3月22日]
カテゴリ ホラー
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都市伝説の蒐集をライフワークにしているという著者の主に世界の都市伝説について書いた本。

その場所から草木を持ち出すと呪われるという地、よみがえる死者、ちょっと苦笑いしてしまう皮肉な死に方をした人、神かくしのように人が消える土地……etc

どれも真実かどうか眉唾ものではあるけれど、そのエピソードじたいが奇妙で面白い。おそらくはネットの海を漂えば見つかる話ばかりであるのかもしれないが、こうして分類して集めてくれているものはなかなかない。薄いけど読み応えはある。

2020年3月22日

読書状況 読み終わった [2020年3月21日]
カテゴリ ホラー
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芸人の著者が事故物件にこだわって住んだ6件ほどのレポートとその他知人の事故物件体験などが綴られている。
「新耳袋」みたいな実話怪談を読む感覚。つまり怪奇現象について解明はされないし、解決もしない。だからこそ怖いし、面白いのだけれど、モヤモヤした終わり方が苦手な人には向いてない(私も小説はハッキリしない終わり方は苦手だけどあくまでノンフィクションとして読めば面白い)。

個人的には昔から不動産広告の間取りを見るのが妙に好きなので、各物件それぞれにちゃんと間取りが載ってるのが良かった。読みながらしげしげと(笑)眺めてしまった。

衝動的に買ってしまったので後々考えると高い買い物だったかな。でも少しずつ読めたので満足感はある。
あと本人が大阪を拠点とした芸人さん(知り合いも芸人さんが多い)だからか、関西の物件が多いかもしれない。

2020年3月11日

読書状況 読み終わった [2020年3月11日]
カテゴリ ホラー

離婚後、高校生の息子と二人で暮らす佐知子。元夫安西の再婚相手亜沙実の娘、冬子を恋慕している犀田と関係を持つが、その後息子の文彦が失踪し、犀田が轢死する。犀田は何者かに突き落とされたらしく、直前まで一緒にいた冬子が疑われる。文彦の行方を追ううちに、佐知子は冬子と文彦が接触していたのではと疑念を持ち始め……

『ユリゴコロ』に続き、著者の2作目。これがデビュー作。率直に言ってしまうと、複雑な人間関係にも関わらず、描写がダラダラしている気がして、中盤くらいまで読むのがつらかった。数ページで引き込まれた『ユリゴコロ』とだいぶ違ったので戸惑う。

ミステリと言っていいのだろうか、犀田を誰が殺したのかという謎が確かにあるのだが、壮絶な過去を持つ亜沙実という女の前で、そんなものが小さく感じてしまった。
そして不幸な意味で蠱惑的な亜沙実に自らを差し出し消耗する男たち。それを知った佐知子の絶望と諦念。こんなことがあったにも関わらず、関係を断てないというか、断たないのか。佐知子のことが理解できない。

言ってしまうと登場人物の誰にも感情移入出来ないのだが、それでもグイグイ読ませてしまう筆力(謎の置き方?)はさすがというべきか。ただ、全てを亜沙実に起因させ、彼女が恐ろしいほどに魅力的だったから仕方がないという終わり方はいかがなものだろうか。とモヤモヤしたものが残る読後感だった。

2020年1月2日

読書状況 読み終わった [2019年12月26日]
カテゴリ ミステリ
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奇妙な襲撃事件・何者かに狙われてる美女・歴史ある旧家の異様なキャラクターたち……といつもの金田一ものではあるけれど、金田一が出てくるのは物語のほぼ終盤である。一人称が作家であるパターンは、金田一ものではまああるのだが、この作品は終盤(本当に終盤)で、思いもよらない展開を見せる。

それに心地よい驚きを覚えるか、アンフェアと感じるかは人それぞれかもしれない。ただ、個人的な感想は「苦しいな」という感じ。
きっとこのトリックありきで物語を作ろうとしたのだけれど、伏線らしきものがなかった(と思う)。終盤で説明はしてくれているが苦しいのだ。それを見破る金田一の見解もあまり大したことはしていないというか……。そのためミスリードされたというよりは、無理やり引っ張られてきた印象なのだ。

とはいえ、首のない死体や死んだはずの殺人者など魅力的な謎が畳み掛けるスピードは早く、普通に面白いミステリーとは言える。

2019年8月24日

読書状況 読み終わった [2019年8月19日]
カテゴリ ミステリ

マンガ『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』のスピンオフ小説。ちなみに上遠野さんは初めて読む作家。

この作品は、黄金の風でブチャラティのチームから離脱したパンナコッタ・フーゴを主役に据えた物語。そして黄金の風の終了後の世界を描いているので、当然、登場人物たちの現状などネタバレ必然である。そういうのが平気な人と、黄金の風を読み終わった人のみに勧める。

マフィアの元麻薬チームを始末する任を負われたフーゴは、同じく非のあるスタンド使い二人と共に彼らを追う。
一方の麻薬チームも精鋭揃いのスタンド使い。黄金の風同様、負けたら死の壮絶な戦いとなる。
そんな中、フーゴは半年前のことを回想する。敬愛していたブチャラティが突然連れてきたジョルノという少年。回り出す運命。まるでジョルノが運んできたかのように。
なぜ「彼」はこの任務を自分に命じたのか。自分が持つおぞましいスタンド〈パープル・ヘイズ〉も含め、邪魔に思っているのではないのか。

上遠野さんが描くラストに魅せられた。自分は原作の黄金の風は未読なのだが、「彼」がトップに立ったことによる新生〈パッショーネ〉が何を目指しているのか、そしてその戦いから途中離脱したフーゴの苦悩や後悔といったものが丁寧に描かれていくからこその、ラストの「彼」との会話がまるで神話のような感じさえした。
まあ意地悪な言い方をしてしまうと「出来過ぎ」な位。

おまけとして(?)まさかの箇所で、『石仮面』『トニオ・トラサルディ』が登場(?)します。

2019年1月16日

読書状況 読み終わった [2019年1月11日]
カテゴリ マンガ
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『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない(第四部)』のスピンオフ小説。

でもこれは完全に乙一ワールドになっている。乙一は数作しか読んでいないが、彼のリリカルでダークネスな世界観とジョジョの実は結構残酷な部分が見事に合致した作品だと思う。

もちろん四部の主要登場人物や舞台杜王町について要所要所で触れてくるので、乙一が四部をかなり読み込んで書いているのがファンならわかるだろう。

ここに登場する新たなスタンド使いとそのスタンドもかなり面白い。……といっても笑えるわけではなくて、苦悩に満ちた復讐の物語だ。わりと途中で物語の全貌は見えてくるのだけれど、彼が生まれ出でる発端となった事件は恐ろしく辛い。ラスト近く、彼が出自を知り、その場所へ向かった時のことを語る場面は切なく胸に迫った。

最後の最後に復讐の最終形態がわかるのだが、語り部の広瀬康一は、黙って見送るしかない。

スタンドという超能力の部分を無視してこの作品を読むことは無理であるが、原作マンガを読んだことがなくても、普通のミステリとして読めると思う。

2018年12月19日

読書状況 読み終わった [2018年12月19日]
カテゴリ マンガ
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実録風の小説? 著者の長江さんが入手した出版禁止となったルポルタージュ「カミュの刺客」。内容はそれを書いた記者若橋が、取材対象の七緒にインタビューし、心中事件の不審点に迫るというもの。心中の背景に大物政治家が絡んでいる疑惑が拭えず、七緒を追求する若橋。七緒は問題の心中の一部始終を記録したビデオテープを彼に見せるが……

何かこちらを騙そうとしてるんだろうなと構えて読んでいたせいか、そんなに驚きはせず。たしかにラストの方はおぞましい展開になっていくが、なんというか、全てが終わってもスッキリしない感じは残る。
長江さんが示唆した答えを素直に受け止めればいいのか。正直、こういったモヤモヤした終わり方の小説は苦手。これがもし現実にあったことなら、納得するけど。

2018年12月2日

読書状況 読み終わった [2018年12月2日]
カテゴリ ミステリ

ジョジョシリーズの岸辺露伴スピンオフ短編小説集第二弾。
あいかわらず露伴が自ら飛び込み、あるいは巻き込まれる形で怪異を体験する。他の人の感想でもあったが、作家によって露伴のキャラが微妙に変わるのもまた面白い。

「幸福の箱」
美術商は魅力的な箱と露伴を残し、部屋を出る。つい触れたとたんに箱は崩れ落ち……独身の露伴が結婚について少しだけ考える(笑)。美術商夫婦の奇妙な愛。

「夕柳台」
その住宅街はなぜ静かなのか。それは静かな世界を求めた老人たちの願望が異様な形で具現化したもの。展開はかなりマンガだけど(笑)、実際問題、若い世代との対立は常にある。

「シンメトリー・ルーム」
シンメトリーにとり憑かれた建築家と露伴の対決。この作品集では一番スリリングで面白かった。久々に命の危機的場面も。

「楽園の落穂」
究極の小麦を取材するため僻地を訪れた露伴と編集者親子。またもドタバタ展開なのだけど、小麦の正体がよくできている。こういうのありそうで怖い。

「~」や「!」などの記号の多用、カタカナ擬音、会話文などは前作同様マンガ的(ラノベだから)で、それに耐えられるかで向き不向きあると思う。
とはいえ、どの短編も想像力に富んでいる。たとえば「世にも奇妙な物語」などが好きな人にはオススメ。

2018年11月9日

読書状況 読み終わった [2018年11月8日]
カテゴリ マンガ
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マンガ「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの登場人物・岸辺露伴のスピンオフ小説。但し、ジョジョの世界を知らなくても、純粋に面白い短編集である。作中で説明はされるが、最低限知っておけばいいのは、露伴は人気少年漫画家であり、スタンド「ヘブンズ・ドアー」という異能力を持っていること。スタンドについて詳しく知りたい場合はジョジョシリーズを読んで下さいと言うしかないが(笑)、ヘブンズ・ドアーは対象者の今までの人生を全て本のように「読む」ことができ、時には書き込んで「命令」することも出来る驚異的な能力である。

岸辺露伴は、漫画家として大切な資質ではあるが、いったん好奇心にかられると確認せずにはおれない性格である。その性格から、日々、怪異に巻き込まれる。ときに命の危険も伴うような。そんな事件の数々が描かれている。

「くしゃがら」北國ばらっど
「Blackstar.」吉上亮
「血栞塗」宮本深礼
「検閲方程式」維羽裕介
「オカミサマ」北國ばらっど

文体が多少ライトノベル寄りに感じる箇所もあるが、気になるほどではない。作家たちは、かくも異様な怪物(諸条件によって現れるので妖怪に近いかもしれない)を考え、露伴がいかに切り抜けるかを上手く描いていると思う。襲われている最中はホラーなのだが、切迫しながらも失われないユーモアはちゃんとジョジョの世界観を継承している。

2018年11月6日

読書状況 読み終わった [2018年11月6日]
カテゴリ マンガ
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諸事情で読む。乗り気ではないため、なかなか読み進められなかった(笑)。
しかし話としては温かい人情物なので、好きな人は好きだろう。タイトルや表紙から恋愛物を期待すると肩透かしを食らいます(笑)。

経営難の書店主・安子は場末のケーキ店の職人・創と謎の店員・日向に出会い、書店とケーキ屋が合体した複合型店舗を始めることに。
物語は各々悩みを抱えた客が、安子のお節介や創のケーキに救われ、問題を解決していく連作短編の趣き。ラスト近く、創の過去や日向の謎が明かされるが……特に感動はない。あまりにも出来過ぎてて。

2018年11月5日

読書状況 読み終わった [2018年11月5日]

自分のルーツに背を向ける燐に対して「過去と対峙しろ」と言い、知りたがってた雪男には教えない悪魔のメフィスト。やっぱ面白いわ、このキャラ(「スルーしてください」ってのが色々気にはなるが)。
こうして燐は自分の母親であるユリ・エギンの人生とともに養父である藤本獅郎の青春時代を見ていくことになる。

ただ次の巻では「ベルセルク」のアレのような残酷な展開になっていくのかな。ユリは幼い頃から悪魔に好かれていた様だから、さほど無理矢理ではないのかな。にしても獅郎と同じ姿形のやつでしょう? そう考えると別の意味で残酷な展開でもある。

そしてユリは本当にしえみとかぶる(笑)。燐たちがしえみに惹かれていくのは自然なことだった(こういうの好き)。しかし、当のしえみはどっかに連れて行かれちゃったよ。じつはどこぞのお姫様でした的な展開(嫌いではない)。

2018年11月5日

ネタバレ
読書状況 読み終わった [2018年11月2日]
カテゴリ マンガ

ひさびさの乱歩。しかも初の中篇。あいかわらず乱歩しか書きえない世界。衆人環視での殺人事件など謎解き要素があるのでミステリに入れているけど、個人的には幻想文学だと思っている。
あまりの恐怖体験のため一夜にして白髪になってしまった蓑浦。彼の回顧録という形で語られていく異様な物語。婚約者の初代が殺され、蓑浦は自分に懸想していた諸戸道雄を疑う。友人の探偵深山木に調査を依頼するが、真相を掴んだと彼が告げた直後、衆人環視の海水浴場で殺されてしまう……

とまあ、ここまでを書いても面白い展開なんだけど、ここからさらに蓑浦は諸戸とともにある島へ乗り込んでいくことになる。そこへ行くきっかけとなる手記の内容もすごい。

今の時代だと逆にいろいろ引っかかって書けないものを題材としている。差別的表現も頻発するし。でもそれさえ気にしなければ、とにかくめくるめく面白さ。ラスト近くは冒険小説のような展開にもなる。

この作品の面白さは蓑浦と諸戸との同性愛的関係が描かれているところだと思う。諸戸は物語上、重要人物でもあるけれど、かなり蓑浦に都合のいいように描かれている気がしないでもない。肩入れするほど好人物とは言えないが、最後まで読むと気の毒に思った。

2018年7月9日

読書状況 読み終わった [2018年7月8日]
カテゴリ ミステリ
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書店員さんのポップに惹かれて購入。

ざっくり言ってしまうと都市伝説+伝播系ホラー。栃木の山奥の限界集落にあるらしい【夜葬】という儀式。死者の顔をくり抜き、その中に白飯を入れ……(エグイので自粛)。それについて書かれたムック本を読んだとたん、携帯から文字化けしたメールが入り、ナビが勝手に起動。その人は【どんぶりさん】にロックオンされる。さて、どんぶりさんに追いつかれたらどうなるのか? 助かる方法は……

え~、個人的感想です。追いかけられる恐怖は『ぼぎわんが、来る』の方が上。ラスト、若干ハラハラさせてくれるけど、その後はよくあるホラー小説の終わり方。なので辛口かもしれないけど★2つ。

2018年5月9日

読書状況 読み終わった [2018年5月8日]
カテゴリ ホラー

久々の読書。そのせいなのか、それとも初めて読む作家だからか、なかなかリズムに乗れず、200ページ弱にもかかわらず時間がかかった。

二人の女性を焼き殺したとして死刑が確定している木原坂について本を書くため、面会に行く「僕」。木原坂は「僕」を試すように「僕の内面を知る覚悟はあるか?」と問いかける。「僕」は木原坂の姉である朱里にも会いに行くが、「あなたには本は書けない」と言われてしまう。そして蠱惑的な朱里に溺れていく……

映画原作。映画は見ていないので、これをどう映像化したのだと思うが、たぶんあの「僕」視線で描いていくのだろう。ネタバレぎりぎりだと思うが、とりあえず「僕」がいっぱい出てくる(笑)。誰が誰でというのは、伏線として書いていると著者は言うが、紙にでも書いて分解しないとわからない感じ。不親切とまでは言わない。たぶん自分が久々にこういうミステリを読んだからだと思おう。

2018年3月8日

読書状況 読み終わった [2018年3月7日]
カテゴリ ミステリ

あいかわらず面白い。
ライトニングが何を最終的に追及したいのか、まだ全く見えてこないけど(単なる興味本位を越えて、彼自身にからんだことかなと思っているんだけど…興味だけでもおかしくないのがライトニング)、彼の下で色々知ってしまって苦悩する坊(勝呂くん)はあいかわらずいい人。
それに対して動きに気づいた雪男が…だんだん孤独になっていく様。それに気づきつつ、拒否されていてどうしたらいいのかわからない燐。間で心配するしえみ。
…というか、しえみの心境の変化の原因、まだわからない?
すっごく気になるんですけど(なんかお母さんに言われてたよね?)。
表面的にはクリスマスパーティとか、賑やかな結婚式が描かれてるんだけど、その裏で少しずつ進む不安要素がたまらなく気になる。
ラストには驚き。雪男、どうなってしまうの?
そして志摩くんが現れたのはなぜ?
ライトニングの指示?

読んだばっかなのに…次は半年後か(笑。

2017年10月28日

読書状況 読み終わった [2017年10月25日]
カテゴリ マンガ

前々から読みたい作品だったが、映画化されたので、珍しく買って読む(笑。
映画は未視聴(しかし脳内は俳優さんがしっかりキャスティングされてた)。

亮介は母を交通事故で亡くしたばかりだったが、父も末期がんで治療を拒否し自宅療養していたり…他にも様々な問題を抱えた主人公である。
父の留守に実家で偶然父の部屋から見つけた謎のノート「ユリゴコロ」と題された、創作なのか、手記なのかわからない書き物はこうして始まっている。
「私のように平気で人を殺す人間は、脳の仕組みがどこか普通と違うのでしょうか」
こんな異様な書き出し、亮介でなくとも、読み手はかならず引き込まれるであろう。
そして亮介は様々辛いことはあれど、普通の家庭だと思っていた自分の両親の秘密を知っていくことに……。
「ユリゴコロ」を書いたのは?

なんとなくその正体や先の予想は、つく人にはつくと思うんだけど、それを突き抜けた、不思議な読後感なのである。もちろんこの手記の書き手、殺人に安心感すら覚える人物に嫌悪感を抱くだけの読者もいるかもしれない。たしかに罪も無い相手を次々手にかけている。しかもそんな自分を救ってくれた愛する人にも、とんでもない仕打ちをしている。なのに……ホント、帯に書かれている通り、深い愛の物語でもあるのだ。倫理を捻じ曲げた、理解を求めない愛の物語。

2017年9月28日

読書状況 読み終わった [2017年9月26日]
カテゴリ ミステリ

本書の解説およびネタバレや他の方の感想も読ませてもらって…自分がこんな薄い本をこんなにも読みにくいと思ったのはなぜだろうと思ってしまった。
たしかに時代的には「早すぎた傑作」なのかもしれないが、全てが判明していくのが最終章だからか、判明してみれば(今から見れば)よくあるネタだからか……個人的には辛い読書だった(笑。止めればいいんだけど「何が傑作なんだろう?」という興味でひたすら読み進んできた(亀のごとくジリジリと)。
たしかにネルが登場してからの展開は非常に魅力的でまさに「悪夢」のようだが、私の理解力がついていけなかった。解説にあるような伏線にも気づけなかったし(汗。

2017年9月14日

読書状況 読み終わった [2017年9月14日]
カテゴリ ホラー
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感想は上巻に。

2017年8月30日

読書状況 読み終わった [2017年8月30日]
カテゴリ ミステリ
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