作者:夢野久作/海若藍平
生年:1889年 没年:1936年
僧侶や新聞記者などを経て作家になる。
怪奇味と幻想性の色濃い作風が特徴である。
作品:若返り薬
初出:「九州日報」1923年(大正12年)1月
幻想短編小説。
あらすじは以下の通りである。
太郎さんは自分の欲求のために祖父の物を盗み、用途と違った方法でその物を使ってしまう。太郎さんにはまだ罪の意識はなかった。
しかし、ある一人の乞食に出会い、その乞食に太郎さんは悪事を働いていると言われる。
そして乞食は、己も罪を犯したのだと太郎さんに告白する。
さらに、私はその償いをしなければならない。坊ちゃんも償うことになるのだよ、と言い残し存在そのものが消えてしまう。
太郎さんは罪を意識するとともに償いに恐怖し、祖父のもとへ罪を告白しに行く。
どんな人間にも、罪を自覚し意識する時が来る。自分自身で気がついたり、親や先生など親しい人から諭されて気が付いたりと、色々なタイミングで罪への意識、罪悪感が生まれる。
この太郎さんの場合は、ある一人の乞食の行動で罪の意識が生まれたのだと考える。存在そのものが消えてしまった乞食によって、叱られるよりも怖い体験をした太郎さん。
この経験により罪の意識が生まれ、太郎はは正直に謝りに行ったのであろう。
よく大人は子供に、存在が不確かなものを使って注意をする。「ご飯を残すと“もったいないばあさん”が来るよ」などが例である。だいたい子供たちはこれらの注意を受けると怖くなって言うことを聞く。
この小説はそれらと似たようなものであるのではないかと考えた。
- 感想投稿日 : 2020年1月30日
- 読了日 : 2020年1月30日
- 本棚登録日 : 2019年11月13日
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