
「心中」をテーマにした短篇集。
心中というと家族や夫婦が共に入水や練炭で自殺を図る、という印象が強いですが、本作ではその印象を覆されました。
過去に愛した2人の男の後を追うように、1人を真似て喫煙を続け1人を真似て断食をして安らかに眠ったウメおばあさんが「物理的」にではなく心の底から3人での心中を成し遂げたと思うと、死や自殺は痛ましく哀しいだけではないのかなと感じました。
解説にもあった「死は救済である」という考え方は私自身そのように考えていたのですが、嫌な事や苦しみからの解放だけが救済ではなく、例えそれが病死や老衰でも想っている人と気持ちの上で共に死を遂げたり、
自分の命を賭けて何かを抗議したり伝えたりということは
それ相応に死ぬ側も死なれる側にも救いがあるのかなと、改めて考えさせられました。
- レビュー投稿日
- 2018年10月9日
- 読了日
- 2018年10月9日
- 本棚登録日
- 2018年10月8日
『天国旅行 (新潮文庫)』のレビューへのコメント
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