車窓から見える東京いまむかし 都バスの不思議と謎 (じっぴコンパクト新書 291)

  • 実業之日本社 (2016年4月30日発売)
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感想 : 4
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 もう20年以上都内で働いているが、一度も住んだことがない。仕事関係で出歩くときは、概ね電車で事足りる。急ぎ・深夜ならタクシー。バスは比較的縁遠い存在だったのだが、誰からかもらったのか、なぜか本書が手元にあったのでサクッと読んでみた。

 路線バスマニアでもないので、細かい路線の解説には正直、興味を持てなかったが、第四章以降は歴史あり、小ネタありでおおいに楽しめた。

 戦後に日野自動車が開発した「トレーラーバス」(牽引する車と客車部分がトレーラーのように連結されている)は、「その乗り心地の良さから、GHQより『贅沢ではないか?』と詰問されることがあった」というから、昔から日本の自動車メーカーの技術力はそれなりに高かったのかもしれない。

「意外にお得」と感じたのが、ラッピングバスの広告料金。渋谷車庫の特Sランクの古ラッピングで1年間400万円だというから、一流紙・誌の広告料金を考えるとずいぶん安い。
 
 コロナ禍で外出に制限がかかる時期でもなければ、エリア限定のマーケティング用に、非常にコスパがよい広告スペースだろう(アレックス・カー氏ではないが、景観を文字だらけにしたり、下品にしてしまうこともある、OOH(野外広告)やラッピング車両はちょっと苦手だけど…)。

「バス車両の耐用年数は、およそ十五年」と意外に長い。タクシーだと数年とか聞いたこともある。バスの保有・運用は、メンテナンスしながら長く使う、産業用の機械に近いのかもしれない。

 都で“お役御免”となった後は、貧しい自治体に払い下げられたり、人道支援用に被災地や災害に見舞われた国に無償で送られたりすることもあるとか。

 本書が刊行された後、東京23区などでタクシーの初乗り運賃の値下げが行われた。それが都バスの世界にどんな影響を与えたのかも気になるところ(自分の場合、短い距離でのタクシー乗車が増えた)。

 それでもバスは基本的にタクシーより安いし、電車なら面倒な経路もショートカットできたりする。うまく使いこなせば便利な足だ。ちょっと意識してバスを使ってみるかなあ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: その他
感想投稿日 : 2020年11月10日
読了日 : 2020年11月10日
本棚登録日 : 2020年11月10日

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