知ってるつもり――無知の科学

  • 早川書房 (2018年4月4日発売)
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無知と知識の錯覚を認知科学や心理学の実証研究から解き明かした本。
様々な実証研究から浮び上がった事実は、誰しもが知識のコミュニティのなかで生きているということだ。そこから著者たちは個を前提とした従来の知能測定や知性と賢さの定義を一新する。

人は他者の頭のなかの知識と自分の頭のなかの知識を区別できない。むしろ他者の知識や集団内の知識に依存して生きている。だから世の中の全てのことを知っているわけではないのに自分は何でも知っていると錯覚を引き起こす。これを知識の錯覚という。だが、安心してほしい。無知でも世の中を生きていける理由と知識の錯覚は表裏一体。つまり知識の錯覚や無知であるということは、自分があるコミュニティのなかで生きている証拠でもある。

ここから著者たちは知性や知能の再定義を試みる。知性は個人ではなくコミュニティに宿っている。ならば賢さはIQといった個人の力を測ることでは明らかにならない。むしろ、その人がどれだけ知のコミュニティに貢献できるかによって「賢さ」は再定義できるのではないか。
つまり知性や賢さとは個を前提とした知識量や博識を誇ることではない。知識のコミュニティにアクセスする方法を知っている。自分が「何を知らないか」を知っている。であるがゆえに、自分が不特定多数のコミュニティの知に依存して生きていることを自覚している。他者の話に耳を傾ける傾聴の姿勢が身についている。知のコミュニティに貢献するために他者と認知的分業ができる。こうしたことができる人たちがこれからの時代「賢人」「聡明」と言われ得ると著者たちはいう。

個を前提とした賢さや知性の議論にうんざりしていた身としては、著者たちの知性の再定義は斬新だった。これは何度も読み返そうと思った良書。今のところ2018年上半期のベスト書だった。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2018年10月23日
本棚登録日 : 2018年6月2日

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