迷走するイギリス―― EU離脱と欧州の危機

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ノブさん 政治   未設定

国民投票によりEU離脱を選択した英国。一つのヨーロッパでなく国家主権を残す政府間協調によって欧州をまとめたかったブレア。欧州懐疑派が多い保守党の党内力学とEUへの不信感が高まる世論に抗えなかったキャメロンの挫折と苦悩。世界に衝撃を与えたイギリスのEU離脱に至った経緯を戦後まで遡り概観した内容。

離脱の影響は経済的に大きい。移民・難民問題は根本的な解決が見出せず、EUが他国や国際機関と結んでいた貿易協定(細かなものを含めると2000以上)も、これからはイギリス一国で独自に結び直さねばならない。EU離脱派の主張のひとつに、ノルウェーのように欧州経済領域(EEA)に加盟すればEU市場に加わりながら移民を制限して、権限をイギリス国民に戻すことができるというものがあった。が、これは間違い。EEAに加盟してもEU法に従わねばならず、人の自由移動はコントロールできない。さらにEEA加盟国はEUに拠出金を払わねばならないが、EUの政策決定に加わることができない。従来、イギリスは欧州連合と交渉によって拠出金優遇やユーロ不参加、シェンゲン協定不参加とわがままを通してきた。EU離脱によってこうした特権もなくなる。わがままな交渉すら難しくなる。
離脱派にとって悪夢だが、離脱のメリットという嘘と勢いと扇動は止まらなかった。


英国にとってこの先は茨の道だ。
離脱を煽ったボリス・ジョンソンなどのポピュリストたちの嘘と欺瞞も露わになり、英国民の政治への不信感も増している。民主主義の危機と呼んでもいい事態が起きている。ここに至った原因を著者はグローバル化に見出している。グローバル化によってイギリス人は雇用や移民といった経済問題や社会不安に直面した。自分たちにとって切実な問題なのに自分たちで決められないことに不満が募っている。それをイギリス国民はEUのせいと考えてしまった。


英国のEU離脱問題は、内向きなイギリスを露わにした。ひょっとしたらイギリスが中国やロシアに依存する状況を強めてしまうかもしれない。それは戦後に米英が築いてきた国際法やルールに基づいた国際秩序が深刻な危機に陥ることを意味する。イギリスのEU離脱問題は現在の国際秩序の綻びかも・・・、というどこまでも暗い指摘。読み終えて気分が暗くなった。

レビュー投稿日
2016年10月30日
本棚登録日
2016年10月8日
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