-
「勤労青年」の教養文化史 (岩波新書)
- 福間良明
- 岩波書店 / 2020年4月18日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
幅広く教養への憧憬とその冷却の過程をえがいた秀作。著者の前著に、青年団・定時制を加えて書き下ろされた物でくしくも個人的にヒットする部分が多かった。そのため、定時制についてはやや一面的な部分もあるのではないかと思いつつ、でもああそうだったのかと首肯させてもらうことの方が全体的に多かった。竹内洋の名作教養主義の没落をうまくパラフレーズさせて独自のエッセンスを入れている。改めてこのあたりを学び直したい気分になったし、下村の運動はやや右派の教養主義の運動の系譜ではないかと考えられそうだと思った。何のために学ぶのか、実利でない人文知の価値を深くかみしめたい。
2021年2月22日
-
朱子学と陽明学 (ちくま学芸文庫)
- 小島毅
- 筑摩書房 / 2009年1月10日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
なにより、朱子学や陽明学は政治思想でもあるということ。また、日本人は朱子学と陽明学の間に線を引きがちであるが唐宋の間の線が大きいことなど色々学ぶことが多かった。また、じっくり読みたいです。
2021年2月22日
-
都市――江戸に生きる〈シリーズ 日本近世史 4〉 (岩波新書)
- 吉田伸之
- 岩波書店 / 2015年4月22日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
一度挫折していたが再び読んでみて面白さに気づいた。玄人向けの本であり玄人向けの著者だと思う。(でもこのような本こそ多くの人に学んでほしい気もしないでもない。)(興味を持てたのは鬼滅のおかげかも)火あぶりになった又介、猫の死骸を抱えていた六兵衛、品川の悪党源次郎と擬似遊郭、舟運と薪など、多様なエピソードは想像力を刺激する。
「こうした江戸を生きた民衆たちは、本書によって初めてその名が知られたりするのだろうが、けっして「名もなき民衆」ではない。一人一人が、権力者や偉人・英雄たちと同じように、生を受けて以来、かけがえのない名前を持ち、その後の人生を歩んだ実在した人々なのである」
2021年2月22日
-
ヒトラーとナチ・ドイツ (講談社現代新書)
- 石田勇治
- 講談社 / 2015年6月20日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
ヒトラーとナチを知るのにとても良い入門書だと思う。特にユダヤ人人種論については勉強になった。世俗化しようとするユダヤ人に対して難癖をつけたわけだ。。。
2021年2月3日
-
江戸開幕 (講談社学術文庫)
- 藤井讓治
- 講談社 / 2016年9月10日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
安定して読める名著。家光はうつ病だったから政治制度が整備されたという。他にも、江戸初期の幕閣メンバーのお話とか結構知らないことが多かったので読んでいて面白かった。
2021年2月3日
-
島原の乱: キリシタン信仰と武装蜂起 (中公新書 1817)
- 神田千里
- 中央公論新社 / 2005年10月1日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
大分前に読んだ者の再読だが非常に深く勉強になる。宗教一揆なのかそうでないのか、これは色々解釈させて面白いと思う。再読したい。宣教師も一筋縄でいかない。大友宗麟は結構ひどいことをしているがこのあたりからある意味中世日本を宗教的に克服していく核としてキリスト教が果たした役割は大きかったのではないかなどとやや俗説めいたことをおもってしまった。
-
魯迅-東アジアを生きる文学 (岩波新書)
- 藤井省三
- 岩波書店 / 2011年3月18日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
魯迅についての岩波新書らしい評伝。事細かな評伝と言うより大事なとこを著者の主観をまじえて切り出すという感じ。それでも、魯迅の人となりや育ち、生涯を見通せたし、なにより愛人(学生)との堂々とした生活には度肝を抜かされた。映画が好きだったエピソードや東アジアでの読まれ方のエピソード、竹内好訳への批判など読み応えがあるエピソードも多かった。さっこんのSNSじゃないけど、1930年代に自死した女性の話なんかはくるものがあった。村上春樹そろそろ読んでみるかな。
2021年1月31日
-
戦国日本と大航海時代 秀吉・家康・政宗の外交戦略 (中公新書)
- 平川新
- 中央公論新社 / 2018年4月25日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
最初想像したよりちゃんとした本だった(笑)伊達政宗野望説はちゃんと否定している。伊達政宗と徳川父子の交流や疑いなど丁寧に綴られており興味深い。秀吉の武威がスペインをびびらせたというのはやや新説か。あらためてだが、ポルトガル系のイエズス会とスペイン系のフランシスコ会の対立など改めて知ることが多かった。神田千里『島原の乱』にあるように宣教師たちもある意味当然だが多様であったのだなあと感じることが出来た。スペインの野望の史料は貴重。
2021年2月3日
-
ファシズムの正体(インターナショナル新書) (集英社インターナショナル)
- 佐藤優
- 集英社 / 2018年2月12日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
ムッソリーニとイタリアファシズムあげすぎなかんはあるが、総じて勉強になった。トロツキーのクーデタ法とか。
2021年1月18日
-
第一次世界大戦 (ちくま新書)
- 木村靖二
- 筑摩書房 / 2014年7月7日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
現代史は特に戦史研究には各国の思惑がつきまとうので難しいことがよく分かった。そんな中、よくまとめてくれている本だと思う。なんだかんだ、ドイツが多くの原因を持ちそうだけど、他の国も列強としてのプライドを捨てることが出来ずに大戦を招いてしまった。
大戦を早期にやめられなかったのは国民の声、国民の負担を考えたと言うことも重要だろう。戦争は政治指導者だけではない。
ぺたん将軍については認識を改めた。部下思いの守勢の将軍なのか。のちにドゴールが助命をした。
総力戦は直訳すれば全体戦争。相手を殲滅するというのが真に近いらしい。ここらへんは議論をまちたい。
-
第一次世界大戦史 - 諷刺画とともに見る指導者たち (中公新書 2368)
- 飯倉章
- 中央公論新社 / 2016年3月24日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
各政府の指導者層を中心によくまとめられた概説書だと思う。風刺画は豊富だが、著述の核になっているわけではなく、ユーモアを添える役割を果たしている。
以下、記憶の限り。
ヒンデンブルクとルーデンドルフの英雄コンビのその後やカイザーの最後。ニコライ公皇帝の最後。ラッセルとヴィトゲンシュタイン。イタリアの扱い。無限潜水艦作戦について。オーストリア皇太子夫妻かわいそう。
ヴィルヘルムの世界政策とチンタオ。ロイドジョージとクレマンソーの共通点。民主主義のための戦いアメリカ。ロシア革命がアメリカ参戦を後押し。
-
民衆暴力―一揆・暴動・虐殺の日本近代 (中公新書 2605)
- 藤野裕子
- 中央公論新社 / 2020年8月20日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
良かった。もっと踏み込んでほしかったが。
2020年12月29日
流石である。宣長論がやはり気になる。ナショナリズム論もあったのが知らなかったので良かった。
2021年1月31日
-
板垣退助-自由民権指導者の実像 (中公新書 2618)
- 中元崇智
- 中央公論新社 / 2020年11月20日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
彼の在野性をいかに評価するか。地味だが非常に面白い問題を含む。
2021年1月1日
-
トラクターの世界史 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち (中公新書)
- 藤原辰史
- 中央公論新社 / 2017年9月25日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
終章だけでも読む価値あり。工業による農業の囲い込み。怒りの葡萄読みたい。
2021年1月5日
-
京都を壊した天皇、護った武士: 「一二〇〇年の都」の謎を解く (NHK出版新書 625)
- 桃崎有一郎
- NHK出版 / 2020年6月10日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
やはり、刺激的な本。後醍醐を怪物と表現するのはさすがだし、それであまりある後醍醐。三種の神器のくだりはもはやコントでは。室町幕府は直義派のものであったという理解。明治維新の評価も面白い。
2020年11月3日
-
ビスマルク ドイツ帝国を築いた政治外交術 (中公新書)
- 飯田洋介
- 中央公論新社 / 2015年1月25日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
ビスマルクの実像を知ることができるとてもよい評伝。先行研究にも触れられていて有り難い。特に、家庭環境、田舎貴族の父と都市的な母というコントラスト、大学時代の遊蕩と恋愛など興味深かった。ビスマルクの愛妻家であったという側面も良かった。また、彼は結果的にドイツ統一の立役者となるが最初からそのようなビジョンを持っていたわけでなく、現実的な様々な選択肢を持ちつつ最善の選択をしたというのも、新しい知見であった。あと、鉄血演説は明らかに失言だったという。
2020年10月18日
-
増補 吾妻鏡の方法〈新装版〉: 事実と神話にみる中世
- 五味文彦
- 吉川弘文館 / 2018年9月14日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
難しいというか高度だった。また、いつか、読み直すかも。
2020年10月18日
-
承久の乱 日本史のターニングポイント (文春新書)
- 本郷和人
- 文藝春秋 / 2019年1月18日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
本郷さんの本は分かりやすいところに利点がある。院にとって蓮華法院が寄進を受ける受け皿として重要だったというのはなるほどと感じた。日本史では、職より人が重視されるというのもまあそうかもなと思う。
実朝に関しては通説に近い感じか。坂井さんのと読み比べるのが良い。
2020年10月9日
-
カール・マルクス ──「資本主義」と闘った社会思想家 (ちくま新書)
- 佐々木隆治
- 筑摩書房 / 2016年4月10日発売
- Amazon.co.jp / 電子書籍
- 購入する
若かりしマルクスの文学への傾倒など、父との関係など興味深く読むことができた。後半は資本論が中心でやや難しさを感じた。資本家のわがあとに洪水よ来たれ精神は今も同じだと思う。エコロジーやフェミニズムなど、従来にない観点に触れていたがかるく触れる感じ。マルクスの抜き出し勉強方法とかすごいと思ったし、興味の広さは見習いたい。
2020年9月26日
-
アイヌの歴史 海と宝のノマド (講談社選書メチエ)
- 瀬川拓郎
- 講談社 / 2007年11月9日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
瀬川さんの一般書デビュー作だろうか。やや硬質で、難しく感じる部分もあったが、はじめにで示されたアイヌイメージの転換(戦争と不平等)はなされたように思う。アイヌは決して縄文の生活を続けていたわけではないことを思い知ることができた。氏も言うように、
アイヌが選びとった歴史として、単なる周縁史ではなく主体的に生きたイメージを描き直すことは重要であろう。
2020年9月13日
-
天皇の歴史3 天皇と摂政・関白 (講談社学術文庫)
- 佐々木恵介
- 講談社 / 2018年2月11日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
このシリーズは有難い。天皇の存在は古代史において特に重要だが、一方見えにくいところもあるから。個人的には宇多天皇の個性が際立って書かれていて印象的だった。桓武になぞらえるのも新鮮だし、醍醐への忠告も当時の天皇の教えを押さえていて面白い。
2020年9月6日
-
ナポレオン――最後の専制君主,最初の近代政治家 (岩波新書)
- 杉本淑彦
- 岩波書店 / 2018年2月21日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
始めにで語られたように、回想などで面白く語られ過ぎているナポレオンについて、その史料論も交えながら、平易に語られている良著。女性関係など、面白いところも書いている。個人的にはコルシカ島への思いというか、若い頃の苦闘が新選であった。故郷のために頑張るナポレオン、家族思いのナポレオン、枯れのじつぞうをつかむのは難しいが、そこら辺は参考にしたい。
2020年9月6日
-
フランス革命: 歴史における劇薬 (岩波ジュニア新書 295)
- 遅塚忠躬
- 岩波書店 / 1997年12月22日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
文句なしで名著。フランス革命について、高校生くらいを想定して著述されている。概説書だが、ポイントを絞って史料を掲載し、当時の人々のナマの声を載せていてくれているのは非常にありがたい。
ロダンの青銅時代という像に始まり、それで終わる。彼の言葉も興味深い。レ・ミゼラブルも面白そう。フランス革命は歴史における劇薬という表現を使っている。偉大と悲惨。この言葉はパスカルに由来する。劇薬とは情熱のこと。人々の熱情。
ロベスピエールは、正義を実行をしようとした。恐怖のない徳は無力だと語り恐怖政治にとりつかれてしまった。重要なのは自らが正義だと確信した人ほど過酷な暴力を行使してしまうと言うこと。ナチス後の女性引き回しの写真などから指摘される。
事件と言うより傾向が歴史を作ることもあり得る。