アメリカン・ブッダ (ハヤカワ文庫JA)

著者 :
  • 早川書房 (2020年8月20日発売)
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感想 : 78
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「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」「鏡石異譚」「邪義の壁」「一八九七年:龍動幕の内」「検疫官」「アメリカン・ブッダ」の6篇収録。

「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」は、生まれた直後にヘッドセットを着けて一生をVR空間で過ごす風変わりな民族の話。

「鏡石異譚」は、未来の自分と遭遇するという、ある少女の身に起こった不思議現象。

「邪義の壁」は、ある旧家の一室の大きな白壁 "ウワヌリ" に長年隠されてきた秘密。

「一八九七年:龍動幕の内」は、孫逸仙(孫文)と南方熊楠がロンドンはハイドパークに夜毎現れる天使の正体を暴く科学ミステリー。

「検疫官」は、創作物(物語)の流入を水際で防ごうとする検疫官の苦心。

「アメリカン・ブッダ」は、疫病と天災の大混乱を避けて "Mアメリカ"(コンピューター上の仮想空間)に暮らす人々に、リアル世界から届いた宗教的メッセージ。

今風の斬新なアイデアが盛り込まれた秀作が多かった。「鏡石異譚」では、「もしも、負の質量を持った存在が原子と同じ数だけあるとしたら、それは僕らが認識している宇宙の中に、反転した過去の姿があるという可能性が考えられる」、「僕らの世界が一秒進むごとに、その空間では一秒過去に戻っている。僕らが宇宙の終焉に向かうように、そちらは宇宙の始まりに向かっているんだ。」など、素粒子物理学っぽい説明があったりしてちょっとゾクゾクした。

解説者は、表題作「アメリカン・ブッダ」が一番好き、と書いているが、自分としては「アメリカン・ブッダ」は6作品の中では低評価としたい。展開が遅いのと、後半部で宇宙進化のシミュレーションとリアルワールドがぐちゃぐちゃになってしまっているところがどうも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: SF・ファンタジー
感想投稿日 : 2022年2月7日
読了日 : 2022年2月6日
本棚登録日 : 2022年2月4日

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