危機と人類(上)

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レビュー : 27
norisukeさん 世界史   読み終わった 

「銃・病原菌・鉄」のジャレド・ダイアモンドの最新作。フィンランド、日本、チリ、インドネシア、ドイツ、オーストラリア、アメリカを取り上げ、これらの「近代国家において数十年間に生じた危機と実行された変化についての、比較論的で叙述的で探索的な研究」を行った書。キーワードは「選択的変化」と「モザイク」。

著者は、個人的危機の帰結を左右する12の要因とのアナロジーで導き出した、国家的危機の帰結にかかわる12の要因に従って、各国の危機への対応を比較考察している。この整理分析自体はあまりピンとこなかったけどなあ。

フィンランドの対ソ戦争とその後の(ソ連に追従し信頼を維持しつつ西側との関係も進展させた)綱渡り外交、チリの残虐非道なピノチェト軍事独裁政権の成立・失脚経緯とその残滓、インドネシアのスハルト軍事独裁政権の功罪とナショナル・アイデンティティの成立等、本書が語っている諸外国の近現代史は知らないことばかり。勉強になります。

日本についても、日本の幕末維新期と第二次大戦突入期の状況について、「明治日本の指導者と、一九三〇年代、四〇年代の日本の指導者では、公正な自国評価をおこなうための知識や能力に違いがあった」、「一九三〇年代の日本では、海外経験のある長老級の指導者たちが、海外経験のない若い急進派に恫喝され、威圧され、何人かは暗殺された。幕末期の一八五〇年代末から六〇年代にかけて過激な志士たちが当時の日本の指導者たちを恫喝したり暗殺したりしていたのとそっくりだ」等の指摘は鋭いと思った。確かに、明治の元勲は馬関戦争や薩英戦争で痛い目に遭ってるし、岩倉使節団で欧米を巡ってその高度な文明に圧倒されて、嫌というほど身の程を知っただろうからなあ。

下巻では、ドイツ、オーストラリアの危機を検証するとともに、日本やアメリカに進行中の危機ついて論じるという。特に、アメリカについては、民主主義の伝統が根付いていたチリで政治の二極化から軍事クーデターが起こり独裁政権が成立してしまったことを踏まえて、今後の状況を論じるという。楽しみ。

レビュー投稿日
2020年1月17日
読了日
2020年1月17日
本棚登録日
2020年1月17日
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