抽象的で、全体的に論旨が分かり難い本だった。
本書が言わんとすることは、子供の頃親に十分甘えられなかった人、やさしさに触れられなかった人、愛情欲求が満たされなかった人は、大人になっても(満たされなかった)甘えの欲求が強く残り、その気持ちを抑圧してしまうから自己不適格感などのさまざまな精神的な歪みから依存症や神経症などに苦しむことになる、ということのようだ。
精神的トラブルの全ての原因が(情緒的に未成熟な)親にあるかのような決めつけには、違和感を感じる部分もあったが、実際のところ当てはまる事例が多いんだろうな。
著者が語る精神トラブルの解決策は、こうあるべきと思い込んでいる自分のイメージ(幼児期に自ら刷り込んだ立派な自分、愛される/愛されない自分、強い/弱い自分等のイメージ)を捨て、あるがままの自然体の自分を理解し、受け入れ、自分にやさしくなることだという(決して自分に批判的になってはいけない!)。
「今のままの自分でいけないことなど決してない。今の自分でいけないことはただひとつ、自分が自分を嫌っているということだけである。」、これはいい言葉だと思った。
面白いと思ったのは、「自分の心を他人に投影し、それを実際の他人と錯覚する」という心の性癖。特に、抑圧された感情が相手に投影されるのだという(例えば、自分を嫌う心を抑圧すると、その抑圧された心が他人に投影され、他人が自分を嫌っていると勝手に感じ込んでしまうのだという)。なので、他人に対する感情の多くは、自分の心が作り出している虚像、ということなのだ。なるほど。自分に当てはめて考えても、思い当たる節が結構あるな。
その他、納得できた言葉を幾つかピックアップしてみる。
「自分の周辺の人間関係が、さわやかで快適なものでないならば、まず自分の心の中の幼児性を認めることである。」
「甘えの欲求が満たされてはじめて人は他人の自由を受け入れられる。甘えの欲求を抑圧した人は自由という名のもとに他人を束縛する。」
「説明できない自分の感情というのは、たいてい何か基本の欲求から眼をそむけているということを、その人に告げている。」
「ことさらに恐縮する人間はまた思いあがりやすくもある。」
「他人に心理的に依存しなくなってはじめて、他人の好意を感じられるようになる。」
人間関係に強いストレスを感じて悩んでいるとき等に読むと、腑に落ちることの多い良書なんだと思う。逆に、心が欲していない時に読んでも、ピタッと嵌まるところがなくて、分かりにくいと感じてしまうのかもしれない。
- 感想投稿日 : 2021年3月19日
- 読了日 : 2021年3月19日
- 本棚登録日 : 2021年3月19日
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