クラスメイツ〈前期〉 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2018年6月15日発売)
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感想 : 53
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北見第二中学1年A組の24人。それぞれを主人公にした短編24編をつないだ連作短編を、2分冊にしたそのうちの一冊がこの『クラスメイツ 前期』。上下巻でなく前期・後期で分けられているあたりが、なんとも気の利いた演出だと思います。

読んでいてすごいと思うのが24人の書き分け。長編でもそれだけのキャラを出して動かすなんて大変だと思うのですが、それを自然にやってのけるすごさたるや。

特に語り手が変わるという特徴を存分に生かし、他の短編で少し匂わせたことのその後のエピソードが、他の語り手で明らかになったり、また明らかに何かありそうなキャラの話がなかなか出てこず、次か、次かと先を読み進めて行ったり……。森絵都さんの思惑があるかどうかはわかりませんが、ついついはまってしまう。

それでいて各短編の長さというのは、どれも20ページほどでおさめられているのも、すごいというか、森絵都さんの技量を感じます。だから語り手ごとにスクールカースト的な部分での、クラス内での目立つ・目立たないはあるけれど、短編内では皆平等にそれぞれの心理が語られ、それぞれが主人公になる。だから自分の好きなクラスメイツ、思い入れのあるクラスメイツがきっと見つかるのではないかと思います。

ドラマチックではないけれど、中学生の気づきや成長、ほろ苦い心情、時にはくだらない日常も見事に抜き出されます。一方で不登校、友達とのケンカから非行に走りそうな女の子、完璧だけど、どこか危ういクラス委員長など、前期の間では解決に至らないこともちらほら見られて気をもんでしまう。

後期も続けて読まざるを得なくなる、そんな一冊です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文芸・文学・群像劇
感想投稿日 : 2022年2月11日
読了日 : 2022年2月11日
本棚登録日 : 2022年2月11日

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