死の記憶 (文春文庫 ク 6-8)

  • 文藝春秋 (1999年3月1日発売)
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感想 : 24
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 9歳の時、母と兄姉を射殺され犯人と目された父が失踪したスティーヴ。それから35年後、妻と一人の息子をもうけた彼の前に、取材の申し込みと称しレベッカという女性が現れる。彼女との会話で徐々にスティーヴは事件に対しのめりこんでいき…

 冒頭の雨とスティーヴが警察に保護された描写がとても印象的。
事件が起こってしまったことに対する虚無感や、まだ現実に対して今一つ理解が追い付いていないスティーヴの雰囲気などがとても巧く描かれていたように思います。

 事件を追いかけてしまう人間の哀しさというものもしっかりと描かれていたと思います。事件を知るためにレベッカと会い続けるスティーヴ。
しかしそれによって妻とは擦れ違い、ゆっくりとスティーヴは大切なものを失っていきます。その姿が切なかったです。

 事件の真相については『緋色の記憶』『夏草の記憶』といった作品と比べると少し弱いかな、と思いましたが、上記の2作は回想中心の一人語りが多かったのに比べ、この作品はスティーヴとレベッカの会話から真相に迫っていくため会話の場面が多く読みやすく感じました。

2000年版このミステリーがすごい!海外部門7位

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー・サスペンス
感想投稿日 : 2014年9月23日
読了日 : 2014年9月23日
本棚登録日 : 2014年9月20日

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