失格社員 (新潮文庫)

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レビュー : 70
著者 :
なおきさん  未設定  読み終わった 

モーゼの十戒をモチーフにした短編集。

著者は元第一勧業銀行社員で、総会屋事件当時、広報を担当していた。著者は十一個の戒めとして、「ために」をあげる。「お客様のために」という論理と銀行の論理は相容れず葛藤の末、著者は退職をする。本書はその葛藤をベースに書かれているように思う。本書のあとがきのメッセージがそれを表している。

「お客のために、家族のために、そして自分のために働け。決して会社のために働くな」

各短編のタイトルは、モーゼの十戒の一つ一つの戒律になっている。

9月13日読書開始、9月19日読了。

<hr>
二神に仕えるなかれ・・・人事が偽ヘッドハンターを装い、高給の外資銀行への転職という誘惑に誘われないかをテストする。

偶像を刻むなかれ・・・顧客の定期預金に手をつけ、解約し、投資信託のノルマを達成するが・・・

主の名を妄りに唱えるなかれ・・・ライバルの常務二人を蹴落とした頭取に。しかし所詮前頭取の腰巾着に過ぎず、前頭取の言葉を唱えられても、頭取としての所信表明も言えず、自分の言葉を失っていた。

安息日を聖とせよ・・・振興ベンチャーは完全テレワーク環境を整備。社員は自宅でも猛烈に働くが、会社には仲間と語らうために来る。銀行から転職した主人公にとっては、彼らが遊んでいるようにしか見えなかった。

汝の父母を敬え・・・ホテルのオーナーを父と敬愛する支配人。オーナーにとっての父親は暴力団組長だった・・・

汝、殺すなかれ・・・部下殺しの異名を持つ主人公。人事部長から社員を育てるようにと釘を刺され、支店長として赴任する。従来の猛烈なしごきは陰を潜め、チーム間を競わせるが・・・

汝、姦淫するなかれ・・・コンプライアンス副部長の主人公。部下の子持ち×一の女性に行為を持つ。「ホメル、アゲル、フレル」を実践し、見事に関係を持つが、結婚を迫られることに。

汝、盗むなかれ・・・広報としての実績を上司に盗まれる。社長による査定面談で自己の実績をアピールしたところ、盗んだ咎でクビに。

汝、偽るなかれ・・・ゼネコン大手4社による非公式の談合組織。独禁法が強化されたため談合から足を洗いたい主人公の営業部長。お互い疑心暗鬼となり、公正取引委員会の餌に釣られ、4社全てが密告。主人公は密告と同時に退職。

汝、貪るなかれ・・・王子製紙による北越製紙の敵対的買収がモチーフになっている。

<メモ>
86 「社会」広辞苑には福地桜痴がソサイアティの翻訳後として生み出したと紹介してある。
409 上杉鷹山「為せば成る 為さねば成らぬ 何事も 成らぬは人の 為さぬなりけり」

レビュー投稿日
2018年11月5日
読了日
2010年9月19日
本棚登録日
2018年11月5日
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