社会契約論 (岩波文庫)

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レビュー : 54
ntさん 哲学・思想   読み終わった 

再読。画期的とされるルソーの本書(1762)はジョン・ロックの「統治二論」(1690)の考え方をベースにしているように思われる。しかし、そこからいきなり跳躍して、主権者は市民であり、政府は主権者に雇われているだけだ、という民主主義を打ち出してフランス革命を招いた、とされる。
ただし私の印象では、ルソーは文学者的な情緒性をもち、それはしばしば「幼児的」とも言える側面で、そうと決め込んだ理想にひた走り出すと、あの「エミール」のような馬鹿馬鹿しい空想教育論に結実する。
本書でも(訳文のせいかもしれないが)ルソーの筆致にはしばしば情緒性が顕著であり、私はどちらかというと、クールなジョン・ロックの方が好きだ。
しかしルソーの思想の画期的なところは、法をつくりだす「一般意志」にもとづく「主権者」と、法に従う「被治者」とを、おなじ「市民」の両面として同居させるという卓抜な発想にあると言えるだろう。
ただこの「一般意志」という概念はルソーの空想性・理想主義がモロに出たものであり、それは必ずしも「多数者の意見」とも限らず、具体的にはどうも明確でない。
最後の方でローマの「民会」について詳細に述べられているが、そこで著者が力説しているのは、代議者選出のような間接民主制にとどまらず、結集した市民による「直接民主制」的なものだ。しかしこれだと「主権者は立法権しかもたない」という彼の理論から逸脱してしまうと思うのだが。
「この人民の集会は、いつの時代にも首長たちの恐れるところであった。だから、彼らは、集まっている市民に、いやがらせをするために、つねに、配慮、反対、妨害、甘言を惜しまなかった。」(P131)
といったくだりは、まるで日本の先日の安保反対デモに対する警察や与党の妨害・反抗を表現しているようで面白い。
理想を掲げるロマンティストであるルソーは、しかし、すべての国家は結局衰退へと向かうというペシミズムをも示しており、このアンビバレンツぶりは魅力的でもある。
まあ、ルソーがえがいた国家の基準からしても、現代日本は相当腐敗していることだけは確かだ。
結局私はルソーの「一般意志」なるものは存在しないか、それを見極める者はこの世にいないと考える。それは孤独な散歩者の夢想であった。

レビュー投稿日
2015年9月27日
読了日
2015年9月27日
本棚登録日
2015年9月27日
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