第1次大戦中に、マックス・ウェーバーがオーストリアの将校たちに向け行った講演を収めた小さな本で、本文は90ページほどしかない。
「社会主義に対するかれの態度・見方をまとまった形で表明した唯一の文献」(訳者)とのことだが、正直言うと、これだけでは短すぎて、「まとまった形で」ウェーバーの考えを把握することはできなかった。
当時のドイツをはじめ、ヨーロッパにおける政治状況をイメージするのは我々にはたいへん難しく、多義的なスタンスでバランスを探っていたかのようなウェーバーのポジションを限定するのは困難だ。
マルクス主義に関しては、マルクス/エンゲルスの『共産党宣言』ただ1冊のみを批評しているにすぎないが、そこで標榜されている予言的なヴィジョンに対して、ウェーバーはおおむね否定的なようだ。
「官僚制の強大化」という、現在の日本にとっても重大な問題については、社会主義だけに限らず、資本主義、民主主義においても大きな問題としてウェーバーは語っているが、その解決については、優れたリーダーシップをもつ政治家の出現に期待するようなことを言っていても、何か釈然としない。
つまりこの本だけ読んでも、ウェーバーの思想を理解することはできないのである。当時の状況のややこしさだけが印象に残るといったかっこうだ。
ところでこの訳書、やたらと漢字にルビがふってあって、中学生でも読めそうな漢字にまでいちいち読み仮名をつけている。ここまでされるとうざったいだけだが、小学生にでも読ませようと思ったのだろうか? 謎である。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
社会学・経済学
- 感想投稿日 : 2012年2月5日
- 読了日 : 2012年2月5日
- 本棚登録日 : 2012年2月5日
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