社会分業論(下) (講談社学術文庫)

  • 講談社 (1989年5月8日発売)
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感想 : 4
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デュルケームには今まであまり感心しなかったが、今回のは凄く良かった。フロイトと同じくらい、歴史上の偉人かもしれないと思った。
「社会」を実在として、これを人びとが意志するその結びつきの力を、デュルケームは「道徳」と呼んでいる。そしてそれは「集合意識」の次元に存在する。社会-道徳-集合意識という三角形がデュルケーム思想の中核にあるのだろう。ここでは、極めて「学問的」なやり方で、分業について考察する。
最初の方で、「連帯」をかき乱す犯罪への懲罰を、著者は激情的な復讐であると喝破する。刑罰が犯罪に対する抑止力である、などという説に対しては、それは副次的なものであり効果もごく限定的なものだという。この指摘についてはなかなか感心した。「法」なるものもまた、人びとの<共同体(場)>における情念の結実に過ぎないという考え方には全面的に同意する。
ただし「集合意識」とはなんなのか、哲学的に考え直してみるとこれは難しい、よくわからない問題である。デュルケーム社会学ではそういった点は追究しない。
「同業者組合」のようなタイプの連帯という概念を導入することにより、デュルケームは近代社会的「分業」の複雑さを救い出そうと、やや楽観的な主張をしているが、この本が書かれた19世紀末ならまだしも、20世紀以降、「分業」があまりにも複雑化・断片化し、「職業」なるものがもはや意味を持ち得なくなってしまった状況に関しては、彼の理論はあまり通用しないように思う。
しかし、多くの示唆を与えてくれた本書はほんとうに優れた書物だと思う。ただ、翻訳はあまり良くない。もともとデュルケームの文章は読みにくいような気がするが、井伊玄太郎氏の訳はちょっと古めかしいので、できればより平易な新訳でもう一度読んでみたいと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会学・経済学
感想投稿日 : 2013年1月11日
読了日 : 2013年1月11日
本棚登録日 : 2013年1月11日

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