精霊の王

著者 :
  • 講談社 (2003年11月21日発売)
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本棚登録 : 311
感想 : 18
4

中沢新一さんの著作はあまりおもしろくないものもあるけれど、これはかなり面白かった。よく書かれた民俗学の本。
石の神として縄文時代あたりにまつられたシャグジなるものが、その後国家の形成、天皇制の確立、仏教の組織的普及を経てもなお脈々と残り、中世にあっては芸道の世界に宿神として、地の底から噴出するエネルギーのように息づいていた、というこの本の思考はたいへん魅力的である。
天台宗本覚論や猿楽(能)に関する記述も興味深かった。
ただし、いつも中沢さんに感じることだが、その思考や想像力はちょっと論理性をとびこえてしまう部分があって、全面的に首肯できない点も感じる。そういう部分は、民俗「学」の学問性を逸脱しているところなのだ。
それでもこの本は沢山の刺激を含んでいる。現代社会的な「理詰め」や「行き詰まり」を解体しうるパワーを持った本だと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 人類学・民俗学
感想投稿日 : 2011年7月18日
読了日 : 2011年7月18日
本棚登録日 : 2011年7月18日

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