熱狂なきファシズム: ニッポンの無関心を観察する

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レビュー : 16
著者 :
ntさん 社会学・経済学   読み終わった 

想田和弘さんについては、内田樹さんのアンソロジーにも寄稿されていたし、映画「演劇1」「演劇2」だけは見たし、何よりも、Facebookの中での発言をいつも見させていただいて、反-安倍、反-原発推進、民主主義擁護のスタンスにはほぼ常に共感させられている。
この本は始めの3分の1ほどが、自民党改憲草案への徹底的な批判、3.11後の「おかしな日本」についての分析に当てられており、あとは雑多な(しかしドキュメンタリー映画論中心の)エッセイ集となっている。
現在の日本の選挙制度についての疑問点にはなるほどと思った。想田さんの映画「選挙」「選挙2」も見てみたい。
また、想田さんの指摘によると、ヒトラー政権出現時の大衆の「熱狂」とは逆に、現在の日本が向かっているのは、無関心な静かさの中でのファシズム化である。日本の一般庶民の政治意識の低さは、今に始まったことではないというか、天地開闢以来、日本の市民が政治的意識が高かったことはないと思う。それでいて、言論・表現の自由などを好きなように満喫しているのが現在の日本人だ。そうした自由、個人の基本的人権、民主主義を明らかに蹂躙する意図を隠そうともしない自民党改憲案を、なぜ国民はろくに批判しようとも、調べようともしないのか。
日本のファシズムは、無関心に支えられて成長している。
一方で、この本に含まれている想田さんのドキュメンタリー映画「観察映画」のセオリーにも興味深いものがある。あらかじめ表現者側が用意した「台本」を排除して客体である人物や状況に接近し、先入観抜きで遭遇した「現実」が、映像により切り取られる。これはインチキ臭いTV番組とは一線を画するものであり、かつ、現代芸術の手法として有効だと思う。
むきだしの現実との出逢い、その体験が映画を作ることそのものでもあるのだ。
ただし、長時間にわたって撮影された映像は、映画としてのパッケージ化にあたって当然きりつめられ、編集される。その「編集」に際して、いかに(予定調和的、イデオロギー的、情動的な)自己を抑制できるか。そこがキモになってくるだろう。
本書は2014年夏に刊行されたもので、収録された文章はそれ以前のもの。安保法制強行採決とその際に生じた、若者達を中心とする巨大なデモについては当然書かれていない。
しかし原発事故をめぐる考察、自民党や橋下徹についての批判、映画「永遠の0」の危険性など、読むに値する文章がてんこ盛りである。

レビュー投稿日
2015年10月31日
読了日
2015年10月31日
本棚登録日
2015年10月31日
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