茶の本 日本の目覚め 東洋の理想―岡倉天心コレクション (ちくま学芸文庫)

4.00
  • (4)
  • (2)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 71
レビュー : 4
ntさん 哲学・思想   読み終わった 

「茶の本」は以前別の訳で読んだことがあるが、この文庫本にはほかに三編、岡倉天心の全著作が入っているということだ。
「茶の本」は読み返してみると、日本の「茶」の美学そのものについてはあまり詳しく書かれていない。抽象的・観念的に論じているだけで、この本を読んでも茶道がどういうものなのか、あまり見えてこないだろう。
 それでも、モノと、作法というか動作の全体を指す茶道を「作品」と呼ぶ岡倉天心の指摘は、やはり西洋人には衝撃だったろう。そもそも「芸術」という概念が、西洋と日本等では微妙に違っており、美学というものを絶対的に規定することは、どうしてもできないのだという気がする。

 さて「茶の本」以外の文章だが、博識を生かして「東洋的な文化」の歴史を描出している。
 たとえば米国のペリーが開国を要求するより先に、当時日本では転生しようという機運が高まっていた、という指摘。
 それはいいけれども、「アジアは一つ」という主張はあまり感心しない。確かに、日本は朝鮮や中国と文化交流し、中国を通じてインド文化にも触れてきており、「東洋」という文化圏は交通システムとして機能してきたと思う。しかし「だから一つ」というのは言い過ぎで、「歴史精神」によって「日本/東洋が目覚める」という天心の主張は怪しい。「歴史の自覚」によりナショナリズムが生まれるというのは、20世紀初めのフィンランドと同様で、国民ロマン主義に直結している。だがそれを「東洋」全般に拡大してしまうと、西-東という素朴な二項対立の中で、やがては「大東亜共栄圏」構想にたどり着いてしまう恐ろしさがある。
 天心自身は日本の武力によりアジアを統一しようなどとまでは考えていなかっただろうが、これらのテクストが書かれた時代、たしかに日本国民の意識には、そういう傾向があったに違いない。

レビュー投稿日
2012年8月14日
読了日
2012年8月14日
本棚登録日
2012年8月14日
0
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『茶の本 日本の目覚め 東洋の理想―岡倉天...』のレビューをもっとみる

『茶の本 日本の目覚め 東洋の理想―岡倉天心コレクション (ちくま学芸文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。
ツイートする