二重らせん (講談社文庫)

  • 講談社 (1986年3月10日発売)
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本棚登録 : 510
感想 : 51

 DNAが遺伝子の実体で二重らせん構造を持つということは、現在では誰もが知っているだろう。しかしそれが発見されてからまだ半世紀余りしか経っていない。発見者として名高いワトソンとクリックのうち、本書の著者であるワトソンはまだ存命だ(クリックは2004年に死去)。

 本書は、DNAの構造に関する研究レースで勝者となったワトソンが、その激しい先陣争いの日々をなかばドラマとして描いている。

 当時の著者はまだ25歳で、博士号も取っていない学生だった。そして二重らせん構造の証明となるX線回折写真も元は彼が撮影したのではなく、別の研究者の報告を見てアイデアを思いついたようなものであり、この点については「手柄を横取りした」というスキャンダルもずっとつきまとっている。

 本書はその序文でも語っているように、客観的な伝記ではない。当事者が自分自身の立場と視点と印象に基づいて書いたものであり、別の登場人物からすれば不本意な部分もあるようだ。しかし彼はそれも承知の上で、科学の現場の熱い空気を伝えることを優先したという。

 科学を教科書でしか知らない人々にとって、その途中の道のりはまったく未知の世界であろう。たとえ彼の業績に影があっても、その熱気を伝えることに本書が一役買っていることは否定できない。ものすごく面白いというほどではないが、とりあえず科学の世界を覗いてみたいという人がいたら勧めて良い本だと思われる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年6月18日
読了日 : 2009年11月9日
本棚登録日 : 2017年6月18日

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