ドキュメント戦艦大和 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋 (1986年4月25日発売)
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感想 : 3

 戦艦大和の最後(天一号作戦)について、その計画から出撃、戦闘、撃沈とその後を詳細に描く。筆者の叙述は最小限に抑えられ、日米両軍の記録と生存者の証言を淡々と並べていくスタイルだが、資料の豊富さゆえ非常に臨場感あふれるドキュメンタリーになっている。特に日本側だけでなく米国側の資料も一緒に参照していることは重要だろう。

 当事者がどれほど必死だったかは痛切に伝わってくるし、その功績には素直に敬意を表したい。しかしながら、片道分の燃料しか積めず航空支援もないという無茶な状態で出撃し、沖縄にたどりつくどころか九州をさして離れてもいない海域で沈められてしまった事実は、そもそも計画自体が間違っていたと言わざるを得ないだろう。無茶とわかりつつそうせざるを得なかった事情もあったようだが、指導者の責任は免罪されるものではない。

 また、大和撃沈が昭和20年4月7日ということを知り、ある種の憤りを感じた。完膚なきまでにコテンパンに叩きのめされて主力戦艦を失い、まともに戦える海軍力はここで失われたのである。それから降伏するまで何故4ヶ月もかかったのか。この時点で降伏していれば、原爆犠牲者を含む何十万人もの命が助かっていたはずだ。

 本書によると天皇も大和撃沈を聞いて5月には降伏を考えたとあるが、それならなおのこと、なぜそこで降伏の指示をはっきり出さなかったのか。そこから降伏に至るまでの道のりはまた別のドラマが多々あったと思うが、決断の遅れがおびただしい命を無駄にさせたことは、語り継がれるべきだと思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2017年6月25日
読了日 : 2015年5月4日
本棚登録日 : 2017年6月25日

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