一揆の原理 (ちくま学芸文庫)

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レビュー : 6
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#10さん  未設定  読み終わった 

 「一揆」と言われて思い浮かべる光景は大勢の農民が農具や竹槍を持って打ち壊しをする、いわば暴動のようなものだったが、そのイメージはかなり間違っていたようだ。本書によれば実際の一揆で武器を使うことはあまりなく、基本的には「交渉」だったという。一揆とは今でいうところの組合とか同盟のような組織だったようだ。

 自然発生的な暴動などではなく決まった作法に従って進められる行動だったという点や、農民による一揆でも文書を用いて契約を結ぶ手続きがあったことなど、かなり意外なエピソードが多かった。中世から近世の農民はほとんど文盲だったと思っていたがそうでもなく、武士に対してただ搾取されるだけの弱者でもなかったようだ。

 本書の特長は、一揆を何百年も前に起きていた歴史上の出来事として解説するだけでなく、現代における人々の活動とも結び付けて考察している点だ。中東のジャスミン革命はフェイスブックやツイッターによって人々が繋がって起きたが、中世の一揆も書状や落書で形成された人の繋がりによる活動だった。時代と場所が変われば道具や規模は変わるけれど、「同じ思いを持つ人々が団結して何かを要求し、勝ち取る」という構図は共通だ。

 ただし、従来の学者が唱えていたように一揆を階級闘争と捉える見方には否定的だ。武士などの支配階級に対して労働者である農民が団結して一揆を起こしたとは言っても、あくまでも封建制のシステムの中での「団体交渉」であり、支配そのものを否定する動きだったわけではないという。

 同じ著者が本書の翌年に出版した『応仁の乱』はこの分野の書籍として珍しくベストセラーになった。そちらは未読だが、本書の印象からして多分かなり面白そうだ。門外漢をひきつける語り口や着眼点はすばらしい。こういうのが良いアウトリーチなのだと思う。

レビュー投稿日
2018年8月24日
読了日
2018年8月22日
本棚登録日
2018年8月24日
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