前に読んだ『世界はこのままイスラーム化するのか』と同じような題材を取り上げているが、それが宗教家の視点からの分析出会ったのに対し、こちらは完全にジャーナリスト視点で書かれている。
筆者はむしろ、この地域で起きている多くの紛争の原因は宗教ではないとの視点に立っている。シーア派とスンニー派などに別れているため宗派対立の様に見える場合が多いが、それはたまたまであって本質的な原因ではないと考える。
「世界が崩れる」というタイトルは釣りであろうが、中東における国民国家という枠組みは多くの問題があり、国とは呼べない「国もどき」がいくつもあるという見方は説得力がある。そして中東の安定には新しい国の線引が必要という主張にもうなずける。
もちろん、実現は難しいだろう。中東の国境が英仏などヨーロッパ列強の都合で勝手に引かれたものであることは誰もが知っているが、それでも今ある国境を平和的に変更するのは極めて困難だ。しかし筆者が「国もどき」と呼ぶいくつかの国がいずれ崩壊するという予想は当たりそうに思う。
その時、誰がどういう枠組みで新しい国を作ることになるのか。今生きている我々が知ることはできないかもしれないが、ベルリンの壁の様に案外突然その日が来るかもしれない。
日本から見て中東は距離的に遠いが産油国なので無関係ではいられない。本書の最後で語られるよう、この地域で日本が重要なプレゼンスを得ることは十分に可能だ。私自身が行くことは(多分)ないと思うが、関心を持っておきたい。
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- 感想投稿日 : 2017年6月26日
- 読了日 : 2016年11月29日
- 本棚登録日 : 2017年6月26日
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