人類と気候の10万年史 過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社 (2017年2月20日発売)
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 著者は福井県の水月湖の湖底に沈殿した年縞堆積物の調査などから、過去の地球の気候変動について精密に時期を特定できるようにする研究をしている。本書はその成果とそこから得られた知見を一般向けに解説しているのだが、なかなかショッキングな話だ。

 気候変動は普通、何万年とか何十万年といった非常に長い年月を経て徐々に起こるものと考えられている。今話題になっている地球温暖化にしても、来年どうなるという話ではない。しかし本書で著者は、そうでもないと言っている。ある年を境に突然、スイッチを切り替えたように気候が大きく変わってしまうことが、過去に起きているというのだ。しかも、それがいつ、なぜ起きるのか予測ができない。安定期と激動期の切り替わりは、ちょうど二重振り子のカオスのように計算不能だという。

 また本書で何度も取り上げられているミランコビッチ理論は、地球の自転軸の傾きが約2万3千年サイクルで首振り運動するのと、地球の公転軌道の離心率が約10万年サイクルで上下することで、地表への太陽光の当たり方が変わり、それに伴って気候が変動するというもの。最近の調査でこの理論が実証されつつあるそうだが、同時に最近8000年程度は説明が難しい変動が起きているという。これが人類の活動の影響かどうかはまだ断定できないだろうが、そうであるなら根が深い。

 いずれにせよ、私達が個人的に何かできる話ではない。温暖化対策として二酸化炭素削減に向けた取り組みに協力するといったことは今後も続けるが、そうしていれば破局は必ず避けられるとも限らない。諸行無常を受け入れるしかないのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2018年9月23日
読了日 : 2018年9月21日
本棚登録日 : 2018年9月23日

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