第20回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
大正~昭和初期に活躍した天才的建築家にまつわるエピソードが6つ。「死者とともに住まう家」「永久に住める家」など、無茶ぶりをふるクライアントの要望に応えるどころかそれ以上のものを作ってしまう、少々人間離れしたところのある建築家。
けれども、彼はその能力と引き換えにあるものを失わなくてはいけなかったという。
明治~大正~昭和初期にかけて、それぞれの時代が映画でもみているかのように鮮やかに浮かび上がる。ほとんどのエピソードが地に足の着いたリアリスティックな筆致で描かれており、唯一魔法的な要素は建物が人の心にもたらす劇的な変化。どこがファンタジーなんだろうと思っていたら、主人公の建築家の存在そのものがファンタジーだった。
もしも天使という存在があって、彼らが人に救いの手を差し伸べるために地上に降りてきたらならば、どんな姿を取るのだろうか――その答えの一つがここにある。そして人間界に降りてきた天使はたいてい透明な悲しみを抱えている。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2014年11月27日
- 読了日 : 2014年11月27日
- 本棚登録日 : 2014年11月27日
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