1960年代末、文化大革命下の中国で盛んに作られたプロパガンダポスターを分類解説し、そこから文化大革命とは何だったのかを読み解こうとする本。
中国文学者であった新島淳良が残したポスター二百数十枚が神奈川大学非文字資料研究センターに寄贈され、それを機に開催された展示とカンファレンスが行われ、書籍化に繋がったもよう。
内容的には前半1章と2章が文革ポスターに関する解説で図版も多く読みでがあるが、第3章以降は文革ポスターとはあまり関係ない内容が多くなる。そもそも、執筆者も田島奈都子さんを除けば、残りの方は中国の専門家ではあるが、美術史やデザイン、広告、プロパガンダを専門にしている人がおらず、美術史や文革当時の中国のプロパガンダ制作についての深い内容は期待しない方が良い。
第3章に掲載されている「文化大革命の宣伝に威力を発揮した記録映画」は当時の記録映画「毛主席和百万文化革命大軍在一起」の日本語字幕みたいなものだし、「1967年の北京――1年間の見聞滞在記」は当時、難聴の治療で中国に招待された筆者の思い出話以上のものではない(とはいえ、急遽毛沢東本人と会えることになった筆者が、毛沢東に声をかけられて舞い上がってしまい、思わず口に出たのが「毛沢東万歳」だったという話は面白かった)。何で掲載されているのか理解に苦しむ。
第5章のシンポジウム報告についても、部外者からみるともの凄いローカルな閉じた世界の話に終始している印象しかうけない。
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- 感想投稿日 : 2024年9月7日
- 読了日 : 2024年9月7日
- 本棚登録日 : 2024年9月3日
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