「通貨」の正体 (集英社新書)

  • 集英社 (2019年1月17日発売)
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ブロックごと個別の説明をしているので、これはこれで概略理解はできた。
しかしそもそもの「通貨の正体」については、詳細の説明がされていない。
それもそのはずで「説明のしようがない」ということがある。
逆に本質の説明はある。
「すべては人間の妄想。だから通貨こそが本当の『仮想』通貨。人間の信用ありきなのだから『人本位制』である」
説明とはこの一行に尽きるのかもしれない。
個別説明は「ドル」「ユーロ」「仮想通貨ビットコイン」「バンコール」「人民元」「SDR」「日本円」と章ごとに行われている。
確かに「通貨とは何か」という問いは命題が広すぎる。
個人的には仮想通貨の未来に興味があるが、それは今のリアル通貨とも相対的に関わってくる話だ。
リアル通貨が電子マネー化していく中で、益々「仮想」化は加速していく。
中央銀行が発行する電子マネーは、確かに仕組みとしてブロックチェーンは使っていないかもしれないが、ユーザーからはどう受け取られているのだろうか。
街の買い物で決済として使えるので、リアルだろうが仮想の電子だろうが、事実として人々にとって違和感なく受け入れられているのだろう。
年代にもよると思うが、通貨としての信用が継続しているということだ。
利便性を考えても、益々電子化の流れは止まらない。
その中で一方の「仮想(暗号)通貨」の意味合いはどう変化していくのだろうか?
そんな事を考えると益々通貨が不思議なものに思えてしょうがない。
世界中の人々の妄想で成り立っている「通貨」。
実態があるようで、妄想だからその足元はあまりにも脆すぎる。
人類の価値観が大きく変化した瞬間に、「通貨」の概念が大きく変化する可能性もなくはないのだ。
個人的にはそういう日が遠からず訪れる気がしてしようがない。
何らかの通貨のような「ポイント(単位)で判断する数値」はあるかもしれないが、それは所詮ゲームのスコアのような、それぐらいの価値のものになるような気がするのだ。
究極言えば、食料が無限に無料で手に入るようになれば、人々は働くことが不要になる。
つまりお金を稼ぐということに意味がなくなってしまうのだ。
人によっては高級マンションに住みたいとか、いい車に乗りたいとかあるかもしれない。
そういう人はゲームのスコアを上げればいい。
しかしただ生きていくだけならば、スコアゼロでも、そのゲームに参加すらしなくても生きていける。
食料だけでなく、結構なサービスも無料で提供されているので、人生を暇つぶしするには十分過ぎるくらいだ。
テクノロジーの進化を考えると、そんなことが本当に起こるような気がしてしょうがない。
それもそんなに未来の話でなく、数十年の内に訪れるような気がするのだ。
そうした世界が幸せなのか、どうなのかはなってみなければ分からない。
その頃は人類の寿命も延びるだろうから、益々暇つぶしが大変になっていきそうだ。
通貨はどう変化していくのだろうか。それは人類の生活がどう変化していくのかにかかっている。
「お金っていうのが昔あったのよ」
こんな会話がされる日が本当に訪れるかもしれない。
(2021/6/26)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年6月26日
読了日 : 2021年6月26日
本棚登録日 : 2021年6月26日

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