御社の新規事業はなぜ失敗するのか? 企業発イノベーションの科学 (光文社新書)

  • 光文社 (2020年2月19日発売)
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著者が主張していることは明快だ。
現状の組織のままで新規事業を行うことは、相当無理があると言っている。
どこの会社でも挫折していることだが、既存事業の目指す目標と、新規事業の目指す目標は当然に異なる訳だ。
だからこそ完全に分けて行った方がよいという理屈。
さらに言うと、単に「イノベーション」と言っても、「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」を分けて考える必要があるということ。
これも非常に納得。
当然に破壊的イノベーションを起こすことが、今後の時代を考えると不可欠だろうと思う。
むしろ破壊的イノベーションを起こせない企業は生き残っていけないだろう。
一方で持続的イノベーションも重要。
この点を社内で考え方を明確に分けておかないと、結果どっちつかずとなってしまう。
目的を誤ってしまうということか。
著者は、「既存事業でキャッシュを稼ぐ」1階、「持続的イノベーション」2階、「破壊的イノベーション」3階と組織を分けることを推奨している。
これについては個人的にも賛成である。
私の経験談でもあるが、既存の部署の中だけで新しいことを始めるのは実際に無理がある。
実は敢えて「新規事業を立ち上げよう」と言わずとも、現場でも当然に既存事業への危機感はある訳だから「新しいことを始めねば」という思いは当然ある。
実際に動いている人もいる訳であるが、結果を出すのは困難を極める。
今までの仕事の流れの中で改善出来る点はとっくにしている訳だし、今までと変わらないメンバーで仕事をする中で、急に新しいことが生まれる訳がない。
「新しいことを始める」気持ちはあっても、実現できないのが今の状態なのだ。
長らく競争環境が少なく、変化の乏しかった業界については特に壁に直面しているのではないだろうか。
特に「判断する上司が一度も新規事業を興したことがない」という状況であれば、更に成功確率を下げている要因になる。
「何を持って新規事業とするのか」「どうすれば新規事業につながるのか」
この前提のすり合わせをきちんと行うことが大切だろう。
その為にも著者は「企業発イノベーションマップ」が大事だという。
このステップも納得だ。
特にフェーズA・Bの3つ
1)イノベーションの型を理解する
2)外部環境の変化を捉える
3)組織のあるべき未来を構想する
は個人的にも本当に大事と思う。
まずはこの3点を順に行わないと先に進めないと思うのだ。
上司は自分が新規事業を立ち上げたこともないくせに、打ち出の小槌のようにポンと出てくると思っている。
絶対にそんなことは地道な作業が必要だし、100個のアイディアで1個形に出来ればよい方かもしれない。
そういう視点でみなければいけないが、まずは植物で言えば「土壌づくり」からということだ。
どうしても何からスタートしてよいか分からずに、メンバー間で話がゴチャゴチャになってしまう。
大体「新規事業」という未知なものを扱うのに、みんなで議論を進行するのも本当に難しい。
会議ファシリテーターの腕にもかかるし、新規事業担当者のリーダーの能力に頼る部分が大きい。
いずれにしても企業は新規事業を興していかないと、座して死を待つのみとなってしまう。
すでに「生きるか死ぬか」の時代に突入しているのだ。
そういう意味でも、新規事業担当者は相当の覚悟が必要だ。
一番大切なことは、案外とこの「覚悟」なのかもしれない。
(2022/5/21)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年5月25日
読了日 : 2022年5月21日
本棚登録日 : 2022年5月21日

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