★こんな時代と地域があったのか★1970年代に盛んだった政治の季節が過ぎ去ったの後の小学校教育の歴史研究であり、同時に著者の自伝でもある。常に「私」の物語に回収される危険を気にしつつも、その影響は逃れ得ない。だからこそ逆に非常に興味ある内容になっている。しかし、ダメ班に対する嫌悪感の出口が、東急沿線と慶応の中学というのはプチブルへの回収とでも言われそうで皮肉だ。集団教育を指導した先生のその後をもう少し知りたくなった。
著者とは一世代違い、暮らしたのも西武ではなく東急沿線だった。それでも団地に暮らし、中学受験をした感覚など随所に近しい部分を感じた。著者が日記を含めて当時をこれだけ鮮明に覚えていること、そしてソ連式とでもいうべき集団教育とそれへの違和感をはっきり感じていたことに驚く。選挙を経て児童会の役員をしていたがそうした雰囲気はみじんも感じなかった。実際になかったのだろう。
もうひとつの大きな違いは、育ったのが団地だけで成り立つ地域ではなかったということだろう。造成地が周囲に残り、団地と戸建て住宅だけが並ぶ地域では、あまりにもはっきりとした区分があり、一体感は醸成しなかった。団地に対して先進的な感覚は全くなく、劣っている印象しかなかった。
著者の例は極めて特殊だったのか?
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- 感想投稿日 : 2016年11月23日
- 本棚登録日 : 2016年11月23日
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