続編を出してくれてありがとうございます。
あのままでもそれはそれでよかったけどちょっと辛すぎる…。2人はもういなくなってしまったけれど、それでも少しは救われた感じです。
大切な人を失っても残された人たちの日常は嫌でも続いていく。
そんな日々を読むことができてよかった。
とある作家の作品中の表現が差別的ではないかと炎上し、結局は作家は謝罪の必要なしと出版社が判断した描写があったり、当時世間からバッシングを受けた2人をなぜ出版社は守れなかったのかと今になって批判する声があるという描写があったり。本当に本当に偶然だけれど自分が読んだタイミングがたまたまタイムリーな感じで、現実世界ではなかなかこんな都合よくはいかないものだなと…。
誰が悪いとか犯人を見つければいいとかいう、そんな簡単な話じゃないんだよな。物語の中でも、現実でも。
2024年2月21日
高殿円さんの作品はたまに面白くないなと思ってしまうものもあるけれど、こちらの作品は面白かった。
子どもの頃に出会ったふたりの大恋愛?物語。
プロポーズ的な雰囲気のシーンはちょっと泣けた。
一時は上手くいくように見えたけれど、様々な事情や時代の流れのために離れ離れになりそれぞれの人生を歩んでいく2人。
最後はハッピーエンドでよかった。
残念な点は、出来事が淡々と語られてる印象が強くてなかなか感情移入しづらい。
三人称視点だからかもしれないけど、もっとふたりの感情や葛藤とか考えていることがより詳しく描写されていて、人間味がもっと読み手が感じることができればよかったかもしれない。
ドラマティックな時代背景、人情溢れる花街、分かりやすい成功展開、これだけ間違いない題材が揃っているのにもったいない。
2024年1月30日
あのQPちゃんがこんなに大きくなったのか、、、と、久しぶりに会う親戚のような感覚になりました。
何事もいつまでも変わらないまま同じなんてありえなくて、家族が増えたり、仕事のやり方だったり、お隣さんも変わったり、いろいろな変化があるのが人生というもの。
1巻と2巻は時系列がわりと近かったけれど、3巻目の本作はかなり時間がとんでしまっています。
その間の話も読んでみたかった気もするけれど、これはこれでとても面白かったです。
ただ……、関西弁のお客さんが登場するのですがその人がしゃべる関西弁が気になりました。
2024年1月3日
自分も1年半くらい不妊治療を続けていて体外受精までしたけれどなかなか思うような結果が出ず…。読んでいてものすごく共感する部分が多くて、思わず泣いてしまう場面もありました。
私も不妊治療してなければ培養士という仕事をされている人たちのことなんて知らないままだったと思います。
妊娠が成立するまでにいくつものハードルがあって、妊娠判定で陽性になったとしても、その後胎嚢の確認、心拍の確認をして、といういくつもクリアしなければならない壁がある。産まれてくるまで何があるか分からないんですよね。
そう思うとそんな数々の難関をクリアして産まれてきたひとりひとりの命ってとても大切だなと感じます。
そんな命のスタート地点に携わる仕事ってきっと大変なことも多いだろうけど、その何倍もやりがいがあるのかな。
不妊治療している・していないに関わらず読んで面白いし勉強になると思います。
特に不妊治療中の旦那さんにはぜひとも読んでもらいたい。
2023年10月15日
明智光秀の娘・玉とその夫・細川忠興の物語です。
言葉少ない忠興と心が少しずつ通いあっていくところは心が温まりました。そんな、幸せな夫婦生活が一瞬だったからこそ、もうなんでこんなことに〜!と思いながら読んでたらほんと涙が止まらなくて、後半は涙と鼻水でグズグズでした。
明智光秀が信長に謀反を起こしてからは、謀反人の娘ということで幽閉されていた玉ですが、再び戻ってきて生活を共にするようになってからの忠興の愛が重たすぎて重たすぎて。
重すぎるが故に、最愛の妻とどんどんすれ違い心が離れていってしまう忠興も本当に憐れというか不憫というか…。めちゃくちゃ玉を愛していて、そして愛されたいと思ってるのにそれを上手く伝えられなくて…、もうなんて不器用さんなの!
そして最後に玉が選んだ選択肢もやっぱりめちゃくちゃ泣ける。
すれ違いはあったもののお互いに深い愛情があったんだな、と。
いや、もうこれだから歴史小説は面白いんですよ。
実際に生きてた人たちだから。
どんなやり取りがあったのか、何を思い、何を感じ、何を考えていたかなんて想像の範疇でしかないけれど、ひとりの人間として生きていたことは事実なんですよね。
この時代の女性は10代で顔も知らぬ男性のもとへ嫁ぎ、子どもを産んで育てる。敵と味方が日々頻繁に入れ替わる。身内が明日には我が敵に、なんてことも日常茶飯事。
そんな中で生きていくなんて本当になんて逞しいんでしょう。
2023年10月10日
今の60歳と昔の60歳では、そりゃ色々違うよね。
今は非正規でまだ働き続ける人が多いんじゃないかな。
今まで築いてきたキャリアそこで終わってしまう、その先の日々に不安を覚えるのは誰にでも起こりうるよね。
こんな、老後…ていうほど60代は老いている訳では無いけど、こんなリタイア後の生活が送れたら楽しそう。
自分の親とか家族とのほうがなかなか上手く付き合っていけないのは私にも身に覚えがある。
桜井にちょっとイラッとしたけど、きっと彼にも彼なりの苦悩があるのでしょう。てか、こういうアホな男子クラスに1人はいるよね。デリカシーのないやつ。そのくせわりとクラスの中心で目立つやつ。
2023年7月16日
2023年7月5日
犯人の真意はなんなのか、何が目的なのか、事件の真相は、、、気になって一気に読んでしまった。
スズキの言っていることに少なからず共感する部分もあった。人間誰しもが持っているであろう醜い部分が見事に描写されていたと思う。
コップの水が表面張力でぎりぎりこぼれずにいたのに最後の1滴で溢れしまうように、積もり積もったものが爆発して突発的に犯罪に手を染めてしまう人もいるんだろうな、とは思った。
まぁ、大抵の人は理性と常識で人の道を踏み外すことなく、犯罪とは無縁の人生を送るんですけどね。
2023年6月21日
- タイムマシンに乗れないぼくたち
- 寺地はるな
- 文藝春秋 / 2022年2月8日発売
- Amazon.co.jp / 本
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さらっと読める短編集。
さらっと読みすぎて、いくつかはもう内容が頭に残っていない…。
タイトルにもなっている「タイムマシンに乗れないぼくたち」と「口笛」というお話は面白かった。
2023年3月6日
- 芦屋山手 お道具迎賓館
- 高殿円
- 淡交社 / 2022年11月30日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
ライトノベルのような感じ。
マンガを文字に書き起こしたとでも言ったらいいのか…。
コミカライズしたら面白そうだな、と思った。
茶道具たちが擬人化して、話をしたり、昔のことを思い出してみたり、全体的にふわっとした穏やかな雰囲気の小説だった。
本当に道具たちがおしゃべりできたら、本当の歴史とか、歴史の細かい部分まで知ることができて楽しそう。
YA向けというか、児童書のような感じもする。
…と思って、作者さんのこと調べてみたら、実際にラノベの作品をそもそも書かれてる方なんですね。
面白くないわけじゃない、むしろ楽しく読むことが出来たけど、読書好きの人やラノベに馴染みのない人には物足りないかも。
2023年2月20日
おもしろかった。
脈々と受け継がれていくものと、変化していくもの。
それぞれの時代ごとに、それぞれの生き方がありその人の人生がある。
現代から見れば古臭い習慣やしきたりだったり、風習だったりしても、そこに誇りを持っていたり生きる拠り所としていた人もいるわけで。
価値観は人それぞれだから、たとえ理解はできなくても否定はしたくないと思った。
2023年2月13日
面白かったー!
普段はあまりミステリを読まないけど、読みやすくてページをめくる手が止まらなかった。
どんでん返しがいくつもある感じ。
続編あったら読みたい。
またあの2人が再会して、タッグを組むか、はたまた攻防戦を繰り広げるか。
でも正体が分かってしまっているから、それはありえないか。
たとえば、風貌も名前も変えていてそれとは気付かずに再び会って難事件に挑んで、最後に正体に気付くとか。
最後の終わり方もよかったなぁ。
読み終わったばかりで興奮が冷めやらない。
綾辻行人さんの十角館の殺人、読んでみよ。
2022年5月17日
本屋大賞にノミネートされた10冊のうち5冊読んだけど、今のところこれが断トツで面白かった。
読んでいるうちに点と点が徐々に集まり線になり、絡み合って、最後はプツンと切れる。そんな印象の本だった。かろうじてまだ1本繋がっている。その1本は切れずに繋がったままであって欲しい。読み終わったあと、そう感じた。
多様性って便利な言葉。
マイノリティについて、多様性について、LGBTについて。
そういったテーマを扱う本はたくさんあるけれど、「今はオープンにできる時代」とか「自分は自分だから」とか、そんな明るく語ることもできないレベルの、苦しさ寂しさ孤独感を持っているマイノリティの気持ちが丁寧に書かれていると思う。
「正しい欲」
読み終わって、タイトルの意味を噛み締めて、また冒頭の数ページを読むと、とても沁みます。
2022年5月14日
ほっこりする話とか、心の傷を乗り越えて成長していく系の話かと思いきや、人の生死が関わる短編集で何となく暗い空気も漂う1冊。
最近は、こういった短編集で人の傷みに寄り添う系が多いなと思っていたけれど、そういうのとは少し違った。
実際に人間ってこんな暗い部分やドロドロした感情、他人には到底理解されないであろう感情も持ち合わせているよね。
でも、そのすぐ隣には人を慈しんだり、愛おしいと思う気持ちもある。
何となく前向きな方向で終わる話もあったが、まっすぐで清々しいお話ばかりではないのがよかった。
花うた、という話の中に出てきた『どろぼうの男の子』という物語がとても印象的だった。
2022年5月12日
あっという間に読み終わってしまった。
心温まるお話ばかり。
でも、生きづらさや傷みをそれぞれ抱えながらも、人との出会いを経て前を向いて歩いていく、誰かの一言で救われる、そのままのあなたで大丈夫、的な似たようなパターンのお話ばかりで、どこかで読んだことがあるような雰囲気。1話ずつが短すぎて、読み進めていくうちに、ちょっともうおなかいっぱいです、って感じになった。
お探し物は図書室までがすごく良かったので、他の作品も、と思って呼んでみたけどこの作品はあまり合わなかった。
いいことも書いてあるけど、それぞれのエピソードが深く掘り下げられてないからか、薄っぺらく聞こえてしまった。
京都の和菓子屋の孫とおばあちゃんのお話と、京都の男子大学生のお話はよかった。
「木曜日にはココアを」のシリーズとの事。
そちらはまだ未読だったけど、この本から読んでも、問題なく読めた。
そのうち図書館で1作目のほうも借りてみようかな。
2022年3月15日
- 本が紡いだ五つの奇跡
- 森沢明夫
- 講談社 / 2021年9月16日発売
- Amazon.co.jp / 本
- 購入する
もしかしたら、気付いていないだけで、私の周りでも日々、奇跡が起きているのかもしれない。
案外、当事者だと奇跡が起こっていても気づかないのかもしれない。
「心の背骨」という表現がとてもよかった。
私の心の背骨はなんだろうか。
私の読書歴は大したことはないので、偉そうなことは言えないけれど、1ページ目を読んだだけで、「あ、この本面白い」と思う本がある。逆に、1ページ目でなかなか入り込めないと1冊読み終えるのにとてつもなく時間がかかる本もある。途中からだんだん面白くなって引き込まれる本もある。
この本は、最初の1ページ目を読みだしたら、もうページをめくる手が止まらなかった。
とても素敵な小説でした。
装幀、装画、編集者、著者、その他この本に関わる多くの人たちがいることを想いながら、読みたい1冊です。
2022年1月27日
他人と共存して生きていくうえで、とても大切なことがぎゅっと詰まっている本だなぁ、と思った。
『ふつう』って何だろう、ということも考えさせられた。
『ふつう』というのはひとりひとりが違う状態のこと。その人はこの世にたった1人しかいない。どこにでもいる人なんていない。
ということを言っている場面があって、すごく刺さった。
あとは、発達障害をもった兄が、「伝わらないと思うなら、言い方を変えたらいい。伝える努力をしてないのに、『なんで私のことを分かってくれないの』というのはただのワガママだ」と妹に言うセリフには、ハッとさせられた。
発達障害があるとかないとか関係なく、自分以外は「他人」なわけで、たとえ家族や夫婦であっても、考え方も価値観も違うし、何を考えているかなんて、言葉にしなければ分からない。言葉にしても伝わらないことが多々ある。
私はよく「ふつう分かるでしょ!?」って言って旦那に怒ってしまうこともあるけれど、その「ふつう」というのは私にとってのふつうなわけで、他人はまた違う「ふつう」を持っているということを肝に銘じておきたい。これから気をつけようと思う。
2021年12月18日
デビュー作がとてもよかったので二作目も読んでみました。
前作に引き続き、ちょっと静かで切なくて柔らかい雰囲気をまとった小説、という印象。
視能訓練士という職業について初めて知ることが多かったし、自分自身の目を大事にしようと思いました。
目が見えることは当たり前ではない。
日常の当たり前は当たり前ではないと、自分のおかれている環境がいかにありがたいものかと実感しました。
ただ、良い悪いとかではないのですが、、、
なんとなく主人公の人物像が朧気な感じがします。
私個人の意見としては、本を読みながら人物像を自分の中で具体的にイメージすることで、より共感できたり、作品の世界に入り込めると思うのです。
何歳なのか、髪は長いのか短いのか、身長は高いのか低いのか、どんな生活をしていて、何を考えているのか、どんなことを感じているのか。
前作の主人公は親を亡くしたということだったので、どことなく陰があり存在感が希薄という雰囲気もよかったのですが、今回も同じような雰囲気があったのには少し違和感というか、主人公でありながら物語の傍観者でもあるような、読者と同じ立ち位置にいるような印象です。
だから、読み手はさらにその外側から物語を読んでいる感じがしました。
2021年11月15日
よかったー。
数十年の時を経て、ハッピーエンドなのもすごく良かった!
ほっこりした。
どんな時代にも、それぞれ悩みを抱えた子ども達がいて、いろんなことを考え、感じながら未来に向かって生きている。そして、その悩みが解決しようとしまいと3年間という時間が過ぎれば必ず旅立って行ってしまう。
そんな時の流れをコーシローはずっと見つめて生きてきたんだね。
私は、自分の高校の同窓生が今どこで何をしてるかなんてほとんど知りません。
何年も離れてしまうとますます分からない。
けれど、そんな名前も顔も分からないたくさんの人達が同じ学び舎で同じ3年間という青春時代を過ごし、それぞれにきっといろんなドラマがあったんだと思うとなんだか学校って不思議な場所だなと思う。
2021年7月4日
面白かった。クセがなくて読みやすい。
特に、シングルマザーのお話が良かった。博物館に行きたくなった。
参考文献の量がとても多くて、非常に丁寧に調べて取材して、この作品が書き上げられだのだということを実感。
ただ正直に言うと、1年後にはおそらく内容を忘れていると思う。
最近は人の傷みをテーマにしたものが多くて、どこかで読んだことがあるような雰囲気。
現代社会における生きづらさ、苦しさ、虚無感。
そんなものを抱えている人たちが、誰かに、何かに出会い、少しでも前へ歩き出す勇気をもらう。
この作品がつまらないとかではなくて、たまたまこの本を読む前に立て続けに同じようなテーマの本を読んでしまっていたから、どこかで読んだことがおるなと感じてしまったんだと思う。
ただ、そういったテーマのものが話題になるということは、それに共感し、勇気をもらう人たちが多くいるということで、自分の中にある弱さと向き合いながらみんな生きてるんだよね。
2021年6月10日
- 錦繍(きんしゅう) (新潮文庫)
- 宮本輝
- 新潮社 / 1985年5月28日発売
- Amazon.co.jp / 本
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すごくよかった。
先日、初めて宮本輝さんの小説を読みました。
そのことを職場の読書好きの人と話していると、その人も宮本輝さんの小説はほぼ読んだことがないのだけれど、人から勧められて読んだのが【錦繍】とのことでした。
そこで、私も読んでみたくなり、図書館から借りてきて読みました。
まず、文章がとにかく美しい。
そして情景描写が丁寧で繊細で、目の前にリアルにその場の状況が浮かんできます。
命とは、生きるとは、死ぬとは、人生とは、いったい何なのか。
解説もよかった。
普段、あまり解説をじっくり読むほうではないが、この本の解説もまた響くものがありました。
なんだか宮本輝さんにハマりそうな予感。
読書をしていて最近感じるのは、年齢関係なくどの世代にも愛される本もあるけれど、その年齢だからこそ刺さる本もあるということ。
自分が30代に入り、結婚、転職、引越しなどの経験をしてきて、自分に響くものが変わってきていることを実感しています。
私が20代前半にもしこの本を読んでいたとしても、途中で読むのをやめていたかもしれない。読んだとしても、何も感じなかったかもしれない。
もちろん、若くてもその作品の良さを感じられる人はいるだろうけど、私の場合はそうではなかったと思います。
今だからこそ、この本と出会えて良かった。
心からそう感じます。
2021年6月1日
宮本輝さん初めて読みました。
何となく難しそうな小説書かれてるのかな、という勝手なイメージで今まで敬遠してきたのですが、そんな今までの自分を反省しました。
他の作品も読んでみたい。
読みやすいしスっと物語の中に入っていけるのだけれど、決してサラッと読める訳ではなくて、どっしりとした軸が一本通っているような、そんな印象を受けました。
しっかり、じっくり、味わって読む本です。
親から子へ、そしてまたその次の世代へ受け継がれていくものだとか、夫婦関係、親子関係、友人関係。そんな、人と人の繋がりを強く感じました。
灯台を人間に例えるところの表現が、とても良かったです。
2021年5月25日