ゲームのルール

  • 日本放送出版協会 (2003年8月26日発売)
本で見る
3.64
  • (7)
  • (5)
  • (15)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 47
感想 : 6
5

 一つ質問させてください、12年前の2002年6月18日(火)、皆さんどこにいたか覚えておられますか?

 私は富山駅にいました。前々職での金沢への仕事の帰りに、飛行機の関係で富山空港に向かう途中。そう、2002年ワールドカップ・決勝トーナメントの「日本 vs トルコ」を駅前のオーロラビジョンで観ていました。

 全てを観れたわけではありませんでしたが、試合終了のその瞬間、すべての音も色彩も消えたような、そんな世界を画面越しに感じたのを今でも覚えています、、なんてことを思い出したのは、こちらを久々に読み返したから。

 その2002年のワールドカップ、決勝の審判でもあったコッリーナさんの、自伝的なエッセイ。2003年の本ですから、ワールドカップ後すぐの本となっています。

 今から振り返ると、なんとも懐かしい選手の名前などてんこ盛りなのですが、スルッと落ちてきたのは次のくだり。

 “「準備をする」ということは(中略)偶然に任せない、という意味”

 業種を問わず、仕事を進めるにあたって、共通の認識ではないでしょうか。そして準備とは身体的な意味合いのみでなく、

 “(準備とは)何をしに行くかということの認識でもある”

との“心構え”も含めてのことだと話されています。

 このような“想い”をベースにされているからこそ、あれだけの実績を残す事が出来たのでしょうか、そして根底にあるのは“サッカーへの愛”、審判は経済的には決して裕福とは言えません、好きでなければやっていけないとの要素も強いようです。

 そんな“審判という職業”の実態についても、ご自身の経験を交えながら丁寧に描き出されています。サッカー観戦にあたって、審判の立ち位置や考え方に触れることができて面白い、そんな一冊です。

 なお、2002年大会で笛をとった試合の一つ“日本 vs トルコ”戦についても言及されています。試合終了の笛を吹いたのちの“10秒間の完全な沈黙”と、それに続く嵐のような拍手。それはとにかく結果を出したというチームに感謝の気持ちの表れであろう、、そしてそれは今までの私には沸き起こったことのない、感動的な瞬間だったと。

 “自分たちのしたことに誇りを持っていいと思う。悲しむんじゃない。胸を張れ”

 当時のキャプテン宮本選手へのこの一言は、今でも震えます。当時富山駅前で感じた想いと、どこか共通していたからかもしれません、なんて。

 さて、2014年ブラジル大会もいよいよ大詰め、残すところはあと2試合。それぞれが胸を張れるような、そんな“自分たちらしさ”を失わないサッカーを見せてくれることを、期待しています!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 蔵書
感想投稿日 : 2014年7月11日
読了日 : 2011年4月17日
本棚登録日 : 2011年4月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする