オタク・イン・USA:愛と誤解のAnime輸入史 (ちくま文庫)

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本棚登録 : 160
レビュー : 14
制作 : 町山智浩 
okadataさん 文化、音楽など   読み終わった 

2006年発刊の文庫化なのでやや状況は古いが文庫版後書きによるとアメリカでの日本のマンガの英訳所の販売部数は2007年に680万冊、総売上は6200万$に達した。同じ年のマーベルの売り上げが12570万$なのでほぼその半分だ。しかし、粗製濫造とマンガを揃えた全米チェーンの書店ボーダーズの倒産もあり2012年には販売部数120万部、総売上2100万$にまで落ち込んだ。著者のパトリック・マシアスは1972年生まれ、アメフト選手とチアガールが象徴するアメリカだが小学生の頃はみんな「マッハ・GO GO GO」や「科学忍者隊ガッチャマン」や「宇宙戦艦ヤマト」を見ていた。そして21世紀の新世代のアニメファンは自分のことをOTAKUと呼ぶ。Hip Hopと同じくサブカルチャーのひとつとして爆発的に拡がり全米で年間に開かれるアニメ・コンベンションは20以上参加者はのべ10万人を超える。コスプレイヤーがあふれるのはハロウィンで仮装するのに違和感がないからだそうだがほんまかいな。

1960年代ハリウッドはテレビ局を敵視し映画の放送権を売ろうとしなかった。そこで海外の質の良いSF映画を作る会社として配給会社UPAのサパスタインが目を付けたのが東映だった。「怪獣大戦争」「サンダ対ガイラ」制作費を持つ代わりにゴジラを勧善懲悪のヒーローとしていく。そうだったのかガイガンとかメカゴジラ好きなんだけどなあ。最も一番好きなのはヘドラだったりするが。84年に東宝がゴジラを復活させると香港製の安っぽいゴジラ人形が300万個のバカ売れ、そして人間大のビニール製風船ゴジラもバカ売れだそうだ。

おもちゃで言うと原作アニメのないまま超合金シリーズが「SHOGUN WARRIORS」として輸入されマジンガーZのロケットパンチやライディーンのチェンジ・ゴッドバードなどに子供たちが群がった。高さ60センチのジャンボマシンダーシリーズも売られている。それまではブリキのカクカクしたろぼっとしかなかったころだ。これが後にトランスフォーマーにつながることになる。

しかし、アメリカに輸入されたアニメやヒーローものは結構ひどい目にあっている。ウルトラマンの翻訳は原作に忠実だったが94年にやっと放送されたウルトラセブンは無惨だ。零下140℃の対決でポール星人はモロボシ・ダンに語りかける。「我々はダーゲン・ハッツ星からやって来た。」さむい。しかもお茶の間では暴力シーンにうるさいアメリカではアイスラッガーでの切断シーンはカット。大人気だったガッチャマンも暴力シーンが生々しいと大幅カット、ビルの倒壊シーンもカットそれでもアメリカのアニメに比べるとアクションシーンはダイナミックだったし何よりも衝撃的だったのが白鳥のジュンのパンチラキック。大ヒットの原因はパンチラですか・・・クールジャパンのルーツはエロとバイオレンス、日本にいると感じないがこれがクールなのか。そういえば最近クレヨンしんちゃんのお尻ぷりぷりがインドネシアでポルノ扱いされたようだ。何を今更と言う感じですねえ。人気爆発のセーラームーンも衣装がセクシー過ぎると問題になったという。

小池和夫の子連れ狼に影響を受けたのが今では人気作家のフランク・ミラー、セリフの多いアメコミと日本マンガのコマ割りの技法を融合させたのが「デアデビル」そしてバットマンを復活させた「ダークナイト・リターンズ」や「シン・シティ」だ。映画だと日本マンガの影響はわからないけど、クエンティン・タランティーノは「キル・ビル」に日本映画や香港映画のオマージュを埋め込んでいる。wikiによると小池和夫がキル・ビルの原作は修羅雪姫であると映画会社に版権料の支払いを要求したところちゃんと払われたらしい。他にも「ワイルドスピード」は南カリフォルニアのアジア系からメキシコ径へと拡がった日本車改造ブームのルポから始まった。ジョン・シングルトン監督はグランツーリスモをイメージして演出したそうな。

日本のアニメやマンガ文化を真面目に論じた研究がなかなかナンセンスで面白い。「サイケな国日本、こんなにもすごい場所だったとは!」96年発刊の「サムライ・フロム・アウタースペース/日本のアニメを理解する」によると「らんま1/2」に仏教や神道を無理矢理あてはめ、「デビルマン」でさえ日本的だそうだ。そして「サイレントメビウス」と俳句を結びつける。2001年の「現代日本のアニメ/「AKIRA」から「千と千尋の神隠し」まで」ではテキサス大学で日本文学と日本文化の教鞭をとるネイピア女史が「アニメは日本の現代社会を映し出すのに役立つ鏡であり・・・」と語る一方で「AKIRA」の旧東京にぽっかり空いたクレーターを女性器と肛門に見立てるのだそうな。おいおい。

ブッカー賞を受賞した小説家のピーター・ケアリーは富野由悠季とのインタビューでこう聞く「モビルスーツ戦争は第二次大戦の経験から生まれたのか」「赤く光るビームサーベルを手にしたRX−78はサムライの直系の子孫ではないのか?」富野「ガンダムはただ単におもちゃのロボットを売るために作られたにすぎません」ケアリー「でも、そこに何か特に日本的なものがあるに違いないと思うんです」「つまり、登場人物はみんな日本語を話していますよね?(あたりまえじゃ、笑)」富野「そこに特に深い意味はありません」クールだわ。

レビュー投稿日
2014年10月30日
読了日
2014年10月30日
本棚登録日
2014年10月30日
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