奥田英朗の群像劇小説。
特色のない中途半端な地方都市にくらす、
残念な人間たちを描く。
離婚した公務員つとめの男。
生活保護のケースワーカーの仕事のストレスから買春に走る。
都会を夢見て真面目に勉強する女子高生。
途中で引きこもりの男に拉致換金される。
唯一の単なる被害者かな。
偽の電気保安器を、一人暮らしの高齢社宅に訪問販売で売り歩く元ヤン男。
金を掴むため仕事に精を出すも、
元ヤンならではのトラブルに巻き込まれる。
スーパーの万引き保安員の仕事にハマる中年おばさん。結婚はしておらず、万引き犯を捕まえた際の優越感に浸るのが唯一の楽しみだが、途中で新興宗教にハマりトラブルに巻き込まれる。
親から地盤を引き継いだ地方議員。
一応地方のための仕事もして、一応のビジョンもあるが、自らの利権の確保もずっぽり。先代からのヤクザとのつき合いもあるが、最近の利権追求の流れ、市民団体の突き上げへの対応を誤り、堕ちていく。
このメンバーを軸に物語は進むがこれ以外にも残念なメンバーがてんこ盛りで登場。だが今の日本の状況をみると、こんな人間たちが居ても何ら不思議ではないと思えてくる。
中央集権と個人主義、
チェーン店進出による地元産業の破壊。
地方の衰退から起こる格差や断絶がテーマ。
作中で買い物狂いの議員の妻が、
「地方には知識層も富裕層も存在しない」
と、自分を棚に上げてぼやくが、
これは事実そうなりつつあるのかもしれない。
物語にでてくる唯一の富裕層は汚職地方議員と公務員。それと詐欺商品を売り歩く会社の社長くらい。救いがない状況。
最後の終わらせ方はちょっとご都合主義が過ぎて好きじゃなかったけど、テーマ的には興味がもてて面白かった。
奥田英朗好きなら間違いない。
- 感想投稿日 : 2018年10月24日
- 読了日 : 2018年10月23日
- 本棚登録日 : 2018年10月23日
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