クソ面白い。そんな下卑た言葉から初めても文句は言われないだろう。言われても気にしないが。森見登美彦さんの描く味のある大学生が気持ちいほどよく描かれている。感動である。
この作品は恋文の技術を手取り足取り教えようという胡散臭いビジネス書ではない。研究のために田舎に飛ばされたお茶目な男子大学生が書いた手紙が載っているそれだけの内容だ。読んでいるうちにどんどん手紙を書きたくなってくるという意味ではそこらに溢れている有象無象のビジネス書(全て有像である)と同じであろう。
守田青年の実情が自分と似ていたのでついつい傷の舐め合いをしているような気分になった。就職なんて考えたくない。詩人か、高等遊民か、でなければ何にもなりたくない!である。
作中に他作品の小ネタが散りばめられているので探してみてはいかがだろう。パンツ総番長が出てきたときには再会の感動で咽び泣いたものである。
何事にも教訓を求めるな!ということが教訓として書かれていると思った。無意味なことにかける時間こそ人生を豊かにするのだと自分も爪先から心の底まで共感した。できることなら一緒に無為な時間を過ごしてくれる相手が見つかることを祈るばかりである。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文芸書
- 感想投稿日 : 2021年4月23日
- 読了日 : 2021年4月22日
- 本棚登録日 : 2021年4月22日
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