戦争が始まるため、離れ離れになった少年ピーターとキツネのパックス。二人は而ニ不ニ(ににふに)の仲。[仏教の考え方の1つで、2つに分けられないもの。1つであること。別々のものに見えるもの同士が、実際にはつながり合っている。境界がない。ことらしい]
父親に言われ仕方なくパックスを森に置き去りにしたが、お互いがまた会いたくて、過酷な日々に挑む。
少年の側とキツネ側との視点で物語は交互に進む。少年側のお話は正直やや退屈だったが、キツネ側は興味深く、真に迫っていた。戦争のお話が中途半端でうっすらとし過ぎているのがやや残念だった。
それでも、パックスがピーターを想う気持ち、それが段々と野生に慣れてきて、新たに出会った仲間を想う気持ちも加わり、感動的だ。同時に、少年がパックスのために、自らの意志を強く持ち、成長していく姿も美しい。
自分より、本当に愛するものができた時、人は、キツネは、自分は辛くなっても、相手の幸せを心より願うようになるのだと改めて教えられた。亡き愛犬や愛猫と、お互いを信頼と親愛で満たしていた日々も思い出し、改めて動物が好きだと感じた。
となると、これまで自分が経験したと思っていた(対人間の)愛は、偽物だったのかも…?と少し悲しくなった。
最後は珍しく泣いてしまった。そして、終わりの数ページを丁寧に読み返した。ピーターとパックスの心の動きを、互いを想う心を、一片たりとも取りこぼしたくなくて、必死に細かく読んだ。児童文学と知らずに読んだが、読んで良かったと思える一冊だった。
○ピーターを守る責任。その役割が果たせないのは、辛い。
○ピーターは思った。誠実な人と一緒にいるのは、なんと嬉しいことだろうと。
- 感想投稿日 : 2023年12月22日
- 読了日 : 2023年12月22日
- 本棚登録日 : 2023年11月26日
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