文庫版 狂骨の夢 (講談社文庫)

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本棚登録 : 6804
レビュー : 564
著者 :
髙梨ぽこさん  未設定  読み終わった 

人間の感情としては、人の執念深さや復讐心やらが描かれているのだがシリーズを重ねるにつれて動機がフクザツ&高尚になってゆき、感情としては全く移入出来なかった。
が、小難しい話をわかりやすくストンと落ちる言葉にしてくれる様がどうにもアドレナリン放出を誘うようで、ついつい読み進めてしまう。
それこそ、こっちが憑物を落とされているようだ(と同時に、別の憑物を宿されているとも言えるのだが)。

三作目にして思うのだが、「不思議なことなど何もないのだよ」ということもまたある意味では憑物なのだなと。

しかし私が魅力を感じたのは、だからといって不思議なこと否定論みたいなもので読者に何かを押し付けたりするわけでもなく、むしろ最後のたたみかけにおいては出来すぎていて信じ難い=夢から醒めるような心持ちがして、不思議なことなど何もない、ということこそ不思議だ、と言う風に思えてしまったことだ。
(ラストのお前なんか大っ嫌いだ!なんて、憑物が落ちてようやくみんな呪いから醒めて現実に戻ったはずなのに、最もフィクショナルに感じる。設定された装置としての、セリフだと感じる)

京極堂の言葉も確かに現実の一つの見え方ではあるけれど、それが絶対的に正しいわけでもなく、答えでもない。
彼のやっていることは、完全に右に振れきってしまった針を左に振れきってみさせるようなことで、こういう風にも見えるのだよ、ということに過ぎないのだと思う。だから思いつきの歌を歌ったり、でまかせを言ったり出来るし、それで成立するのだと思う。

誰もが、自分なりの現実を物語化することで、どうにか整合性をとって日々を送っているように思う。
例えば、不眠の原因はバイオリズムのせいなのかカフェインのせいなのか枕のせいなのかわからない。
きっとこうなのだろうという理由が自分なりにでもわかると、安心する。
自分なりのストーリーを作って、それを思い込んだり疑ったりしながら現実なるものを構成していく。
その解体と再構築のアシストが「憑物おとし」の役目なのかもしれない。

レビュー投稿日
2013年6月26日
読了日
2013年6月26日
本棚登録日
2013年6月26日
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