一流芸術家に一般常識なんて要らない。日常を犠牲にし、恋人も家族も友情も捨て、交通事故に巻き込まれ血を流しても本番を優先する。芸術的才能とは狂気と紙一重だ。

音楽界での成功を夢見て、鬼コーチの学校に入学したドラマーの青年。コーチの指導は人格否定攻撃の連続。そして、才能なき者を容赦なく切り捨てる。それでも青年は諦めない。コーチに認められ、音楽界で認められる一心で日常のすべてをドラムに打ち込む。

そんな狂人と狂人の師弟関係はラストの大演奏で完結する。このシーンの音楽的な迫力はもちろん、互いを理解し得た師弟の表情を観るためだけにこの作品はある。

そして、大演奏は何の余韻も残さず、唐突に終演をむかえる。「え、これで、終わり?」と誰もが思うが、しばらく考えると、これ以外の終わり方はありえないと思う。彼ら2人に観衆の拍手も要らないし、その後の2人の関係がどうなるかなんてこともどうでもいい。芸術という閉ざされた世界で必要なのは才能だけなのだから。

2018年4月18日

読書状況 観終わった [2018年4月18日]
カテゴリ 感動モノ

現役ベストセラー作家の青春自伝。

なんとなく大学生活を過ごし、なんとなく入ってしまった出版業界で編集者として月収10万円でスタートした著者の1980年代。今で言う、ワーキングプアだが、当時の著者は社会の底辺にこそ真実があると信じていた。

今の作家、橘玲からすれば、物事をわかっていないかわいそうなヒト、ってことでバッサリ一蹴されるべき若者だろう。逆に言えば、そんな体験があるから、今のリベラルで徹底的なリアリスト作家に成長したのかもしれないが。

作家デビュー前の著者のベストワークは事件前のオウム真理教に編集者として密着取材していたことだ。しかし、95年のオウム・サリン事件によって、バッシングを含めた様々な反応が著者の周囲に巻き起こる。おそらく、この一件で著者は自らの業界内の立ち位置を見つめ直したのだろう。その数年後、著者は編集者ではなく、小説家、作家としてデビューする。

2018年4月18日

読書状況 読み終わった [2018年4月18日]

北海道に出回る拳銃を回収することだけが警察組織のため、社会正義のためと思い込み、突き進む主人公、諸星警察官。拳銃回収のためなら、ヤクザやロシアマフィアとも仲良くなるし、覚醒剤だって売りさばく。ついでにセックスもするし、ヤクも打つ。誰がどう見ても、最後には破滅しかないのだが、本人だけが満足しているという喜劇。

そんな極端で社会性のない主人公を綾野剛が熱演。この話が事実なのか、フィクションなのか、もはやどうでもいい。主人公のぶっ飛びまくるハイテンションが全てだ。

2018年4月12日

読書状況 観終わった [2018年4月12日]
カテゴリ 新感覚

ネット界のカリスマライター、ヨッピー氏による副業のすすめ。なぜ、著者はネット限定のライターを目指し、職業にできたのか。そして、彼の著述スタイルとポリシーなどが語られる。彼のライターとしての最終目標はロシア大統領プーチンと決闘し、それをネットニュースとして公表することらしい。

そして、著者がサラリーマンにすすめるのは、本業以外に没頭できるものを作ろうということ。そして、調子に乗って安易に本業を辞めないこと。本業があるから収入度外視で好きなことができる。それを続けることでやがてカネはついてくるのだ。その証明が著者のライター業だ。

とはいえ、誰もがヨッピー氏のようになれるわけじゃないし、没頭できるものを見つけられるわけじゃない。しかし、著者のような生き方を知っておけば、サラリーマン生活に余裕が生まれる。リラックスした生き方ガイドとして読むのは悪くない。

それから、著者は健康管理に水風呂をすすめているが、コレは全くの同感。

2018年4月12日

読書状況 読み終わった [2018年4月12日]
カテゴリ ビジネス

第1次世界大戦を敗戦国ドイツ視点でながめ、その敗因を分析する。

戦前の19世紀、ドイツは皇帝ヴィルヘルム1世、首相ビスマルク、軍参謀モルトケによる緊張感のあるトライアングルが機能し、ヨーロッパ最強の軍事力を持っていた。が、ドイツ軍は強すぎた。その強さを過信し、戦線を拡大しすぎてしまった。東でロシア、西でフランスと戦い、さらにはイギリス、アメリカと次々と敵を増やす。適当なところで戦争を手仕舞いすることができなかった。

本来なら政治力、交渉力を発揮すべき、ヴィルヘルム2世や軍参謀ルーデンドルフらは徹底的に勝利することだけにこだわりすぎ、ドイツは自滅する。

日本が積極的に関わっておらず、戦場も遠くヨーロッパだったことで、日本人には馴染みの薄い第1次世界大戦だが、本書はドイツ国内の政治情勢だけに焦点を当てることで、非常にわかりやすい戦争記になっている。

2018年4月12日

読書状況 読み終わった [2018年4月12日]
カテゴリ 歴史モノ

現在でも存続する巨大企業グループ、三菱。その発端は幕末の志士で、坂本竜馬の右腕として活躍した岩崎弥太郎が海運会社を起こしたことだった。弥太郎は持ち前の豪快さと強気で新政府への協力と対立を繰り返し、時代の混乱期に商業界でのし上がる。

そんな弥太郎のあとを継いだのは実弟の岩崎弥之助。彼は兄とは対照的に慎重で温厚。その性格のおかげで、三菱は入れ替わりが多い明治政府の権力者たちが誰であろうと協力関係を結ぶことができ、政府のバックアップで海運業以外にも重工業や不動産業などの業種に進出する。

さらに3代目久弥、4代目小弥太は戦後の不況、好況時にそれぞれ適したリーダーだった。

三菱グループの発展は時代にマッチした4人の岩崎が地位に固執することなく次々とトップのバトンを渡すことができたからだ。

2018年4月4日

読書状況 読み終わった [2018年4月4日]
カテゴリ 歴史モノ

事故で意識不明の寝たきり状態になった夫の殺害容疑で、逮捕された妻の国選弁護人を申し出た弁護士、御子柴。優秀な弁護士だが、依頼人から大金をふんだくることで悪名が高い。そんな彼がカネにならない、勝ち目のない裁判をなぜ自ら引き受けたのか。事件の真相解明と並行して、彼の数奇な過去にも注目が集まる。

神戸の酒鬼薔薇事件の加害者が罪を償うとすればどうすればよいのか。そんな重いテーマに挑んだミステリー小説。作者なりの答えとして、自分以外の弱いもののために闘うというのは一理ある。が、ミステリー作品としては、ページ数の割に登場人物を詰め込みすぎて、消化不良のままエンディング。

もうちょっと主要人物を掘り下げてほしかった。

2018年4月4日

読書状況 読み終わった [2018年4月4日]
カテゴリ ミステリー

日本最大の民間信用調査会社、帝国データバンク社による国内倒産事例集。取り上げられているのは全国ニュースでは報道されない地方の中小企業。地味だが、生々しい。倒産のきっかけもちょっとしたトラブルが波紋のように広がってしまったことがほとんど。

倒産の原因として、中小企業ならではのワンマン経営者による不正や判断ミス、一族との対立。唯一のヒット作品だけに売上を頼り、それがコケたことで会社ごとコケるというケース。また、2011年の東日本大震災をきっかけとする産業・経済の大きな変化に対応できなかったケースもある。

こうした倒産の様々なケースをながめると、会社を作ることよりも維持させることが難しい、ということを実感する。

2018年3月30日

読書状況 読み終わった [2018年3月30日]
カテゴリ ビジネス

この前読み終えた「警官の条件」が本書の続編だったと知り、急いで読了。「警官の条件」の主人公、安城和也の祖父清二が終戦直後に警官になったときから物語ははじまる。

実直な交番勤務の警官であった清二は勤務地付近で発生した2つの殺人事件に興味を持つ。結局、事件は迷宮入り、彼は事件の真相に達することなく事故死。その後、物語は清二の跡をついで警官となった息子の民雄が登場する。

3世代で警官となった安城一族を主人公にした壮大な警察大河小説。徳川家康から家光、足利尊氏から義満と日本史では3代目で全盛期を迎える一族があり、安城家も3代目が出世頭となる。

上巻では終戦直後の混沌とした時代から過激な学生・労使運動の時代までを描き、その時代の現場警察官が何を考え、どう行動したかという歴史書としてもおもしろい。そんな時代と権力に流される警官、安城親子の経験が3代目和也にどう引き継がれるのか、下巻が楽しみだ。

2018年1月20日

読書状況 読み終わった [2018年1月20日]
カテゴリ ミステリー

著者、大家投手の日本球界からはじまったプロ野球人生は、米国のマイナーリーグ・メジャーリーグ・独立リーグにメキシコリーグ、日本独立リーグを経て24年間、40歳で終幕する。その間、様々な契約を経験し、年俸5億円を超える大型契約もあれば、無給のテスト生契約や月給10万円の契約もあった。

この激しい浮き沈みそ、プロ野球サバイバル。著者の野球人生の歴史をながめると、こんな荒波の中を20年以上も渡り歩き、それでも野球について真摯に取り組み続けた著者の凄みを感じる。不本意な解雇や契約もあっただろうが、自分の実力を客観的に判断し、どんな契約でも冷静に受け入れることができることも、プロ野球人として必要な才能だ。

また、引退してもおかしくない年齢になり、速球が衰えれば、遅球やナックルを主体とするピッチングに自らを変化させる。過去にこだわらず、現実だけを見つめ続けた。

そんな著者のプロ野球人としての契約のはじまりは高卒選手でのベイスターズとの入団交渉。そこで、高校生の著者は契約金の上乗せを希望する。高校生にして、この態度こそが大家投手の野球人生の象徴だ。

2018年3月27日

読書状況 読み終わった [2018年3月27日]
カテゴリ スポーツ

ごく普通の山好き市民たちが遭難し、生還を果たす。なぜ彼らは遭難したのか、そして、どんな感情と行動で山中を過ごし、生還したのかをインタビューしたドキュメンタリー。

考えさせられるのは、ささいな不注意で山の自然に飲み込まれてしまう人間の弱さと、その一方で絶対的な窮地で開き直ったときの人間の強さだ。

皮膚から骨が突き出し、大量の出血、傷口にはウジがわき、それが目の中に入るという発狂しそうな状況で何日間も救助を信じて待ち続けた者もいる。

彼のように本書で生還を果たす人々はどれも自力下山をあきらめ、救助された者ばかり。遭難時には、体力の消耗を抑えて耐えるということが必要らしい。とはいえ、ベストは遭難しないことであり、そのためには周到な準備と来た道を後戻りをする勇気だ。

本書が教えてくれるのは遭難のノウハウではなく、絶対に遭難しちゃいけないってことだ。

2018年3月23日

読書状況 読み終わった [2018年3月23日]

不正経理、原発への過剰投資、役員同士の内紛と、次から次へと負のニュースを発信しまくる大企業、東芝。そのお粗末な経営はいつから始まったのか。長年、東芝を取材してきた著者による東芝の崩壊ドキュメンタリー。

著者が語る、東芝崩壊の原因は歴代社長たちの無能さにつきる。その始まりは西室泰三が社長に就任したときだ。彼は自社の発展より自身の権力と名誉を求めることを優先。社長引退後も、自分の権力を維持するため、自分に逆らわず自分よりも目立たない者を社長にした。その結果、西田厚聰、佐々木則夫、田中久雄という3代続けての無能社長を生み出すことになる。

特に西田厚聰と佐々木則夫の大人げない権力争いは、20万人の社員を抱える巨大組織のトップとは思えない醜悪さ。しかも「バイセル取引」という決算月だけ黒字化できるという手段を発明するのだから、タチが悪い。

2018年3月16日

読書状況 読み終わった [2018年3月16日]

サザンオールスターズはなぜ国民的バンドとなり得たのか。彼らの1978年デビューから初めての長期活動休止となる1985年までの初期サザンを分析する。

まずはデビュー曲「勝手にシンドバッド」で世間に衝撃を与える。何を言っているのかわからない桑田節とホントに意味がわからない「胸さわぎの腰つき」。このツカミで世間の関心をガッチリつかんだサザンは、テレビから距離をおいていた当時のミュージシャンとは一線を画し、テレビ業界を中心に活躍する。まさに「Workin' for TV」バンド。

紅白歌合戦や桑田・原の結婚式中継など、テレビで消費されるが、これぞというヒット曲は生まれず。しかし、桑田佳祐とサザンの進化は止まることがない。そして、名曲「メロディ」で初期サザンはピークを迎える。ここまでデビューして8年。ビートルズなら解散した年数だが、サザンは再び復活する。

1978年から1985年はサザンにとって国民的バンドになるための助走期間だった。

2018年3月13日

読書状況 読み終わった [2018年3月13日]
カテゴリ 雑学

海外で所持金を使い果たし、帰国もできず、路上生活を強いられる困窮状態の日本人を「困窮邦人」と呼ぶ。本書はフィリピンの男性困窮邦人5人を中心とするルポ。

5人はいずれもフィリピンパブにハマり、日本で稼いだ金をフィリピン女性に貢ぎ、フィリピンまで追いかけ、持ち金がなくなり放り出される。いくらひいき目に見たところで「自己責任」という言葉しか思いつかない。これだけ同情されない貧困者を取り上げて、評価されるノンフィクションを作り上げた著者の取材力、姿勢がすばらしい。

本書で登場する困窮邦人がフィリピンを選んだ理由はフィリピン人の優しい国民性と温暖な気候。これからもフィリピンで困窮邦人は増え続けるだろう。作者には次作でフィリピン在住の「裕福邦人」を取材してほしい。

2018年3月8日

読書状況 読み終わった [2018年3月8日]

変人たちが出そろった上巻が終わり、主人公の活躍の場は東京の中野ふれあいロードに移る。仕事もデリヘル会社の専属ドライバーからバーテンへ。その店の女社長もなかなか個性的。そんな中、主人公の副業としての作家活動はノリに乗る。

ようやく「鳩」の正体が判明するが、それはたいした問題じゃない。いや、結構な大事件ではあるんだけど、本作品の最大のミステリーはこの話がどこまでが事実で、どこまでが主人公の創作なのかってことだ。そして、主人公はやっぱり著者の佐藤正午自身なのか?

主人公の津田同様、この小説発表の数年後に著者、佐藤正午は本当に直木賞を取ってしまう。それが本作品の本当のオチだ。

2018年3月8日

読書状況 読み終わった [2018年3月8日]
カテゴリ 新感覚

直木賞まで取ったのに、落ちぶれた先はデリヘル嬢の運送ドライバー。いくらなんでもプライドなさすぎののんきな中年男、津田伸一。そのいいかげんな性格はなぜかとんでもない大事件を呼び寄せる。

小さな地方都市で起こった一家3人の失踪事件に偽札騒動。津田はかつての作家的好奇心で、それらの事件解決に乗り出す・・・、ということはなく、周囲に流されるまま。しかもその周囲というのが津田に劣らずの奇人変人ばかり。それぞれの会話もまともじゃない。そんな中、津田は正気を保つため、再び小説を書きはじめる。

津田の小説はフィクションなのかノンフィクションなのか、古本屋の店主は何者なのか、失踪家族になにがあったのか。それよりも、タイトルの「鳩」とは何なのか。全くなにも明かされることなく上巻は終了。そもそも本作品はミステリーなのか?ユーモア小説なのか?

わけがわからんが、下巻を読むしかないようだ。

2018年3月5日

読書状況 読み終わった [2018年3月5日]
カテゴリ 新感覚

日本プロ野球に所属する貧乏球団ギャラクシーズ。金と人気じゃGチーム、Tチームにかなわない。が、ギャラクシーズにはベテランの辣腕スカウトマン、堂神恭平がいた。スカウト業界者全てが彼の動きに注目し、彼の一挙手一投足が業界に波風を立てる。そんな堂神を中心にプロ野球ドラフトの悲喜こもごもを描いた連絡短篇集。

スカウトマン堂神の仕事は選手を見極め、チームに入団させること。そのためには、自分のチームを考えるだけでは終わらない。競合する他チームに指名をあきらめさせたり、本命ではない別選手を指名させたり。スカウトの奥深さと真の狙いを周囲が知ったとき、すでに堂神の仕事は終わっていた。そして、堂神はすでに次なる選手獲得を目指していた。

プロ野球裏方のプロというキャラクターは魅力的なのだが、なぜ堂神が命を削ってまでもスカウト業に徹するのか、その説明が弱い。

2018年2月24日

読書状況 読み終わった [2018年2月24日]
カテゴリ スポーツ

元首相を父に持つ政治家、小泉進次郎と福田達夫。2人は自民党農林部会に属し、タッグを組んでJAや全農などの巨大組織を相手に農政改革に携わる。そんな接点を持った2人が日本の将来、政治、農業、世襲、父のことなどを語り合う。

本書の展開は予想通り、知名度では圧倒的な小泉進次郎の発言と彼へのヨイショ中心。しかし、限られた福田達夫の発言の中に農林部会のトップ小泉氏を支え、時には年上として諫言もする忠実な補佐役に殉じる意識が感じられる。同じ世襲政治家だが、あまり似ていない点で2人はいいコンビだ。将来の小泉首相、福田官房長というのも夢じゃない。

2018年2月24日

読書状況 読み終わった [2018年2月24日]
カテゴリ 教養

前著のユニクロ暴露本を柳井社長に思い切り批判され、裁判に訴えられる。さらに今後のユニクロへの取材は一切拒否され、決算発表会や株主総会にも出席禁止を食らった著者。復讐に燃える著者の次なる行動は、ユニクロへアルバイトとして採用され潜入記事を発表することだった。

正式な法的手段で名前を変え、堂々と採用面接を受け、1年で3つのユニクロに採用される。ハードなアルバイト勤務をこなしながら、情報を集める著者。ユニクロという巨大な城に単身で突っ込むドン・キホーテ的ジャーナリストだ。

そんな著者が見たユニクロ従業員はワンマン柳井社長の理不尽な要求で疲弊していた。社長に物申す雰囲気もなく、「会社は誰のものか?」と考えさせられる。

ユニクロにとってブラックな部分を暴露されたことは痛いが、それ以上に痛いのは今後の人材採用活動だろう。著者のような潜入者をチェックする厳しい体制が必要だし、そもそもユニクロで働こうという人が激減するはず。ユニクロもとんでもない人を敵に回してしまったもんだ。

2018年2月23日

読書状況 読み終わった [2018年2月23日]

雇い主もライバルも部下も利用しつくし、彼らの死すら映像のネタとしか考えない究極のパパラッチの成長記。とにかく印象に残るのがジェイク・ギレンホールのギョロ目。彼の不思議な表情を見るだけで、この映画の価値がある。

すさまじい上昇志向により周囲の人間を踏み台にし続ける主人公だが、視聴者の要求を満たす映像を手に入れるには彼のような人間が必要だ。成功者となった彼はそんな社会の象徴なのだろう。

よく考えると、スティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスク、孫正義など成功者と呼ばれる人間はどことなく狂気を抱えている。

2018年2月20日

読書状況 観終わった [2018年2月20日]
カテゴリ 新感覚

なんとなくの就活の結果、TBSのアナウンサーとなるが、体調不良で仕事を干される。しかし、そこから彼の逆襲が始まる。ラジオでの奮闘をきっかけに、ぴったしカンカン、ザ・ベストテン、TVスクランブル、ニュースステーションと数々の大ヒット番組に司会者としてたずさわった久米宏の自伝。

テレビ界における彼の一番の功績は視聴率の取れる報道番組を完成させたことだろう。ゴールデンタイムの平日22時を使い、当時ではバラエティーアナウンサーだった著者がほとんどのレギュラー番組を降板して挑んだニュースステーション。セット、衣装にこだわり、原稿を読むだけではなく、コメントや感情も発するキャスター。とにかく、型破りな報道番組であったが、現在ではその型が受け継がれている。

そして、著者が一番こだわったのは生放送ということ。当時のテレビ界で生き残るには「生」に耐えうる瞬発力。彼はコント55号、黒柳徹子、横山やすしらと共演し、その力を鍛えられた。その集大成がニュースステーションだった。

誰よりも生放送を愛した著者がニュースステーション降板後、今の編集しまくりのテレビ界を去ったのは必然だ。今のテレビ界に久米宏のような生放送で勝負する人間は不要になった。テレビが面白くなくなった理由の一つだろう。

2018年2月20日

読書状況 読み終わった [2018年2月20日]

ビートたけし、明石家さんま、所ジョージとの仕事を経験し、彼らの知られざるプロ意識を体験したTVプロデューサーが語るテレビ業界論。

彼ら3人は常にテレビの観客を意識している。所ジョージなんか、なにも考えずに淡々と司会をこなしているだけのように見えるが、そこには裏付けられたプロフェッショナルなスタイルがある。彼らは何百万円ものセットや衣装を面白くないという理由でボツにするし、放送コードのギリギリを攻めつつも、決してはみ出すことはない。

著者はそんな彼ら3人のプロ意識を受け継ぎ、今の停滞しているテレビ業界を変革したいと願う。「シン・テレビ」だ。

確かに、たけし、さんま、所を担う人材は存在すると思う。が、今の規制だらけでわずかな批判に気を使うテレビ業界では、3人のような才能を持っていても弾かれるだけだろう。著者を含めて視聴者も評価していたはずの「お笑いウルトラクイズ」のような番組がなぜ今、作ることができないのか。そこをテレビ関係者は考えるべきだ。問題は才能を持った人材がいないことじゃない。

2018年2月20日

読書状況 読み終わった [2018年2月20日]
カテゴリ 教養

孤高の芸人、村上ショージ氏がどんな演技を見せるのか。その興味だけで観たのだが、可もなく不可もなく、予想通り喜劇的演技もなく、特に個性のない初老の役者。主人公が阿部寛じゃなくて、明石家さんまだったら、もっと持ち味を活かせたかもと想像してしまう。

ストーリーは詐欺師によるコミカルな復讐劇。名作「スティング」をオマージュ(と言うかほぼパクリ)しつつ、最後にもうひとひねりした作品だ。細部に渡る伏線はよく考えられているけど、あまりに都合良すぎるし、登場人物の職業が特殊すぎる。原作が道尾秀介の小説だから予想通りだけど。

2018年2月14日

読書状況 観終わった [2018年2月14日]
カテゴリ ミステリー

不動産における社会問題を様々な切り口で発信する著者。本書では「マイホーム」を持つことの意義とリスクを取り上げる。定番の「持家か、借家か」論、マイホーム価値の向上方法、マンションVS戸建て、二世帯住宅やタワーマンションの問題点などなど。

「マイホーム」を持つということに正解はないのだと気付かされる。そして、マイホームは「買う」、「住む」だけじゃない。マイホームを「貸す」ことにも目を向けるべきだ。

サブタイトルに記されている2022年は都市部の生産緑地が優遇税を廃止される年。それによって、大量の農地が安い価格で市場に登場し、地価は大暴落すると、著者は予想する。つまり、地価相場の大転換になる。

ホントかね。生産緑地とか言う土地が不動産市場を左右するほど存在するとは思えない。が、都市部で土地を買うなら、2022年まで待ってみるのも悪くはないかもしれない。

2018年2月13日

読書状況 読み終わった [2018年2月13日]
カテゴリ 教養

タイトルは「源頼朝」だが、主人公は頼朝と義経の2人。彼ら兄弟の確執を中心に源平の戦乱を描く。

父、源義朝を殺され、平氏に捕らわれた頼朝と義経だが、平清盛の気まぐれで生かされることに。兄弟はそれぞれ別の道を歩むが、打倒平氏を誓い成長していく。

北条家の力を借りて頼朝は挙兵、鎌倉を本拠地として京への進出を狙う。そこに義経が合流。母との別れを未だに引きずる義経にとって兄頼朝はかけがえのない頼るべき家族であった。が、頼朝にとって弟は単なる一武将だ。若い頃より死を恐れすぎた頼朝は過剰な猜疑心を持つようになってしまった。

そんな兄の心を知らず、義経は認められようと、軍略の才能を発揮、木曽義仲や平家一門を相手に大活躍。さらに嫉妬する頼朝。いよいよ兄弟対決だ、と盛り上がってきた小説だが、そのとたん・・・アレ?というエンディング。まさかまさかの不完全燃焼。途中で作者が書く気をなくしたのか?

2018年1月31日

読書状況 読み終わった [2018年1月31日]
カテゴリ 歴史モノ
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