松下幸之助の憂鬱 (文春新書 983)

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  • 文藝春秋 (2014年10月20日発売)
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先日「血族の王~松下幸之助とナショナルの世紀」を読み、経営者ではなく、人間「松下幸之助」に興味をもった勢いで手にする。

20代で親兄弟をすべて亡くし、松下家の後継として期待した長男は生後1年を持たずに病死。天涯孤独の身である幸之助にとって、血を守ることは執念であり、松下家消滅の恐怖を忘れさせてくれるのが仕事であった。

そんな幸之助の血族と仕事を重視する姿勢は時々、矛盾することもあった。経営幹部に肉親を採用するが、彼らが仕事の結果を出さなければ、その批判は倍増された怒りとなって幸之助に蓄積される。

その結果が、義弟井植歳男の松下電器からの追放であり、社長職を継がせたはずの松下正治からの社長職取り上げであった。

ただし、肉親以外の部下に対する態度は見事であり、多くのフォロアーを育てた。松下幸之助とは確かに経営の神様であり、企業社長として見習う点が多い。しかし、肉親への愛憎が強すぎるあまり、松下電器の後継を作れなかったのは大きな失敗だろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2014年12月7日
読了日 : 2014年12月7日
本棚登録日 : 2014年12月7日

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