安倍晋三と16年間接し、時に政治の重大決定の場に同席した政治記者による安倍晋三人物伝および総理大臣の仕事論。
あまりに近い著者と安倍総理との距離に、内容の中立性が気になる。が、それを差し引いても総理大臣の心構えや覚悟を公にしたことに大きな意味があるだろう。一度最悪な形で総理職を投げ出しておきながら、再び返り咲き、アベノミクス、集団的自衛権、原発問題、消費税増税などの難題に挑み、政権を長期にわたって維持する安倍総理のバージョンアップした凄さを改めて感じる。
そんな安倍総理を支えるのが、麻生太郎、菅義偉、そして亡き中川昭一。お友達内閣と批判されたこともあったが、孤独な総理職にあって、盟友はやはり必要だ。特にお互いに総理大臣の祖父を持ち、敵にも味方にもなった麻生太郎の存在がここぞという場面で光る。
本書の最大の見せ場は消費税増税をめぐるドキュメンタリー。安倍総理の増税先延ばしと解散総選挙の決断、財務省の抵抗、板挟みの立場となった麻生財務大臣。こうしたドラマがあったことを知ると、政治に俄然興味がわく。
国民として一国の総理大臣を叩くも、褒めるも結構。しかし、批評の判断材料を増やすため、総理大臣の仕事ぶりを知っておくことは必要だ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2016年8月12日
- 読了日 : 2016年8月12日
- 本棚登録日 : 2016年8月12日
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