「メフィスト」という雑誌(?)で連載されていた作品。
季刊誌だったのか数年越しの単行本化。
雑誌がおそらくミステリー系の物なのだろう、本作もテイストとしては推理とか謎とか、そういう点に重きを置いて作られている。
もちろんいつも通り、石黒正数の持ち味である軽妙なユーモアも織り交ぜられている。
大友克洋的な、やや退廃的な近未来(勝手なイメージです)、ロボットが普及した世界を舞台にしている。
全9話から成っていて、最後まで読むと一応全部繋がっているということがわかる。
しかしこれ、本当に最初から一連の流れを想定して作っていたのだろうか?
最初の数話は手探りで作っていたような感がある。
途中まで一話完結のそれなりの作品、と言う印象だったのだけど、途中から劇的に話の流れが変わる。それまでのユーモアを含めたやや軽薄な内容からあまりにも変わるので、ちょっと面食らってしまった。
石黒正数さんはその作品全般にPOPさが溢れていて読みやすいのだけど、他方でややブラックな一面(作風)も持ち合わせている。
この作品は読者層などの影響があるのだろうか、彼のそう言った面が他作品に比べて色濃い。
エロとかグロとか、性とか倫理とか、人の汚い部分とか、そう言った面がテーマとして強いのだ。
ある種、人間の欲望を素直に描いていて、ロボットや人工生命に限らず何でも誕生する背景にはそう言った個人的な欲求や好奇心があるのだと思う。それに対する社会の反応もありがちで面白い。
最後には何というか(適切な表現かはわからないけれど)韓国映画のようなもの悲しい終わり方をする。あの収束の仕方、構図は圧巻だった。
とにかく前半と後半であまりにも違うという印象があって評価に悩む面もあるが、心に強く訴える物はあるし、見た後印象に残ることは間違いないと思う。
あとは好みの問題ではないだろうか。
- 感想投稿日 : 2012年9月24日
- 読了日 : 2012年9月20日
- 本棚登録日 : 2012年9月20日
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