(003)世界の美しさをひとつでも多く見つけたい (ポプラ新書)

著者 :
  • ポプラ社 (2013年9月18日発売)
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感想 : 21
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本書を読むまでは、石井光太氏はジャーナリストだと思っていた。そのため、世界の国々の惨状を伝えるべくカメラを向け、言葉を紡いでいるのだと勘違いしていた。しかし、その惨状の中でも希望を見いだし生きていく人たちの力強さと美しさを伝えたい。その気持ちを胸に執筆していたことを本書を通して初めて知った。
繰り返しでてくる一人一人にとっての「小さな神様」
想像もできないほどの絶望や状況の中で、人は何を胸に抱いて生きていくのか。そんな著者の真摯な眼差しに心うたれた。

ー私は他者を見つめるさいに大切なのは、相手がどんな小さな神様を抱いているのかを知ることだと思います。(中略)
小さな神様を見つけるためにはどうしたらよいのでしょうか。(中略)「自分の文脈で勝手な価値観を押し付けるのではなく、相手の文脈で大切にしているものを探す」



何が不幸で幸福なのか。それはその場所その場所で懸命に生きている人たちの「小さな神様」に集約されている。それを知らずに、正義という大義名分を振りかざし、こちらの価値観で物事を解釈したり論ずる事はただの思い上がりでしかない。黒か白か、正義か悪か。それのみで判断できる程自体は単純でもなければ人間は強くもない。グレーであるかもしれない部分にすら寄りかからなければ生きていく事すら難しい極限状況の中で、人は皆それぞれの「小さな神様」を懸命に抱きながら生きている。それでも人は生きていこうとする。その生命力に、力強さに胸を打たれる。

ーつまり、絶対悪も絶対的犠牲者もいない混沌が世の中の現実なのだという結論を提示したのです。

物事をより多面的にごまかしなく捉えようとするその真摯な姿勢を感じる。人はわかりやすい物語を求めがちで。でも現実はあまりに複雑で重い。そうした現実を真っ正面から見つめている著者の真摯な姿勢に深い感銘を受ける。

ー私が伝える意味は何なのでしょうか。(中略)第三者が認める事で初めて、「小さな神様」や「小さな物語」は、それを必要とする人々の胸の中で生き続けるものである。


2013年 ポプラ社

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2015年9月18日
読了日 : 2015年9月18日
本棚登録日 : 2015年9月18日

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