大阪の海側で生まれ育った私にとって「橋」は身近なもので、しかもけっこう大掛かりな橋を間近に見ていたことになる。
私が小学生のときに竣工した千本松大橋(せんぼんまつおおはし)は、下を流れる川の両岸に当時は造船所が並んでいたことから、大型船舶が航行できるように桁下が33メートルもの高さになる。この橋は自転車や歩行者でも通れるので、息を切らせながら頂点まで登ったときの景色は最高だ。また下から見上げたときの橋の構造も美しいの一言につき、橋に求められる機能と構造美が一体化した橋の代表例だと思っている。
また、大浪橋(おおなみばし)では道路に架かる鋼製のアーチが身近に見ることができるし、これも私が小学生のときにできた港大橋では、赤い三角形が並ぶトラス橋の眺めが空の青に映え、いつまでも見飽きなかった。
そのような私の年少時の橋の思い出以上にもっと見ごたえのある橋が日本にもいっぱいあるよと言わんばかりに、この本では多くの橋が実例として示されている。
そして私がうれしかったのは、それぞれの橋の実例をもとに、その橋の構造力学や材料力学上の解析のほか、架橋に携わる人々の苦闘と知恵の結集とがわかりやすく書かれている点だ。
専門書ではなく入門書として、私のように橋の見栄えに興味をもったような部外者や、中学生や高校生などのこれから専門分野への興味が芽生え始める人が読むのに適した構成になっている。
ほかに実例で出されているのは…
1)上津屋橋(こうづやばし)(京都府)=時代劇でおなじみ。木橋で“流れ橋”の異名をとる。「流されやすい橋」という短所を逆手にとった例。
2)谷瀬の吊橋(たにぜのつりばし)(奈良県)=風による変形や揺れを防ぐための“耐風索”の説明あり。
3)工事中の斜張橋の写真=これを見れば、吊橋と斜張橋の違いはすぐわかる。
4)そして有名な錦帯橋(山口県)=まず木組みのアーチ型にちゃんと力学的な裏付けがあったこと。そして橋脚の石組みに目を奪われがちだけど、実はこの橋の工夫は、橋脚部の洗堀を防ぐための川底の石張りにあること。
本当は写真をカラーで見たかったけど、さっき書いたように中学生や高校生に読んでもらおうとしたら、4ケタ手前の税別980円の価格設定による現行のモノクロがぎりぎりの所かな。
- 感想投稿日 : 2020年11月1日
- 読了日 : 2020年11月1日
- 本棚登録日 : 2020年11月1日
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