蟹工船・党生活者 (新潮文庫)

3.26
  • (98)
  • (237)
  • (636)
  • (107)
  • (22)
本棚登録 : 3048
レビュー : 399
著者 :
たまどんさん  未設定  読み終わった 

最初はプロレタリア文学として、その思想的背景が嫌であえて避けていた。
間違いだった。

少なくとも「蟹工船」は、共産主義やその周辺の思想的な記述はポツポツと出るだけ。
しかも見かけ上は過度の共産主義賛美な箇所は見当たらなかった。
作者の意図を度外視すれば、この小説の面白さはイデオロギー(団結、反権威など)とは別のところにあると思う。
現代に生きる我々としては、例えば多彩な人物の登場であるとか、セリフを多用した臨場感や、濃密な空間を設定し、そこで起こる出来事や感情の動きを一つ一つ追う、といった、いわばオーソドックスな手法から、小説的面白さを汲み取ることができるのではないか。

そもそも「蟹工船」の設定は古臭いものなのか?
船内の狭い空間に何百人という漁夫たちが押し込められた描写は、満員電車でもみくちゃになった通勤風景を想起させ、死ぬ寸前までの労働者の酷使は、過重な残業を思い起こす。
蟹工船の労働者と現代のサラリーマンとが、私のなかであまりにも重なり、古さを全く感じなかった。
だからと言って、「サボ」を現代人にも薦めるつもりは全く無いけど…
我々の過酷な労働環境をどう改善すべきかは、また別の機会に考えるとして。これを共産主義文学や革命文学というくくりで読もうとするから話がこじれるのであって、純粋に多喜二の小説的技法を味わう、といったノリでいいんじゃないか。
(2007/2/8)

レビュー投稿日
2015年11月8日
読了日
2007年2月8日
本棚登録日
2015年11月8日
5
ツイートする
このエントリーをはてなブックマークに追加

『蟹工船・党生活者 (新潮文庫)』のレビューをもっとみる

『蟹工船・党生活者 (新潮文庫)』のレビューへのコメント

まだコメントはありません。

コメントをする場合は、ログインしてください。

いいね!してくれた人

ツイートする