村長ありき―沢内村 深沢晟雄の生涯

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著者 :
たまどんさん  未設定  読み終わった 

「わたしはね、何が一番大事かといって、人間が生きること、これ以上に大事なことはないと思っているんだよ」

よく読めばわかるが、沢内村の生命行政の奇蹟は、深沢村長一人の力によるのではない。
例えば、深沢以外にも、高橋清吉という村の国保行政一本の“役人”が登場するが、学歴や目立った経歴もない高橋が、深沢の「いいと思ったことはどんどん言ってきなさい。責任は私がとるから」という言葉を信じ、保険や健康行政についていろいろ進言するところがおもしろい。

高橋の案は長期滞納者が保険料を納めたら賞品を出したり、長寿の祝いに賞金を出したり、正直、今の感覚から見ると“?”だろう。だが高橋の策は、意外にも次々と効果をあげる。
保険料支払いの賞品は村民に「村は滞納防止のためこんなに本気で取り組んでいる」と気付かせ村民の意欲と村政への信頼を高め、長寿祝い金は、大家族のなかで自分だけ働けず寂しい思いをしていた高齢者に自分も家族のために貢献できる、という誇りをもたらした。村の苦しみを誰よりわかっていた高橋だからこそ言えたのであり、それを気軽に言える環境を作り、聞き、実行した深沢あってこそだろう。
ワンマン・パワーではなく、周りを引き付け、やがて全体に広げる・・ 地方自治に英雄はいらない、人間的魅力が最後には勝つ、と感じた。

最後に、この本は深沢が故人となった後に書かれているが、深沢の事績の詳細な記述は(当時存命だった)未亡人ミキさんの功績が大きいだろう。巻頭にミキさんと深沢の新婚当時の写真があり、眼鏡をかけた笑顔のミキさんの写真からも、その聡明さが伺えることを付け加えておきます。
(2009/10/10)

レビュー投稿日
2015年11月8日
読了日
2009年10月10日
本棚登録日
2015年11月8日
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