紀元前5世紀~前3世紀頃の古代ローマならびに周辺諸国の興亡について書かれた史伝。
当時のローマやギリシャのポリスなどの社会構造、諸外国との戦役における駆け引きなど、いくつかの視点でローマ世界について書かれている。
特に、私は、現在の日本と照らし合わせ、何か現状打開の知恵があるのではないかと思いをめぐらせながら、本書を読み進めた。
例えば、ペロポネソス戦役中のアテネ。この国は、優秀な人材が多数いたにもかかわらず、滅亡の一途をたどってしまった。この理由として、自国滅亡の危機を身をもってささえようとした者はいなかったと筆者は述べる。
また、アテネとならぶギリシャの強ポリス、スパルタ。質実剛健で戦力も高かったが、閉鎖的な民族ゆえに、結局、弱体化してしまった。
一方、戦力・国力ともに弱小国家であったにもかかわらず、ローマは着実に力をつけ、後に大帝国へとのし上がる。大国家にならしめた所以は、高い愛国心、戦争で勝利すると敵側を国民として受け入れてしまう柔軟さ、そして、模倣の民と軽蔑されるくらいに、他民族から学ぶ国民性。戦争に負けても、必ず何かを学び、それをもとに既成の概念にとらわれないやり方で自分自身を改良し、再び起ち上がる性向にあった。
国際競争力が低下しつつある日本。ローマもケルト人の侵略等、数々の破滅的打撃を被っている。それでも、国力をつけつづけたこの国のように日本がなれるのか?それとも、アテネのごとく人材の国外流出、または政治無関心に陥ってしまうのか?はたまた、このまま国際社会から目を背けスパルタのようになってしまうのか?
時代も民族も異なるローマの物語を理解したところで、日本の諸問題を解決できるわけはないとは思うが、参考になる点はおおいにあると感じた。
物語自体の愉しさゆえに、このような考え方もさせてくれた、良書。歴史とは本来愉しいものなのだと思った。次の物語を早く読みたい。
- 感想投稿日 : 2011年12月30日
- 読了日 : 2011年6月2日
- 本棚登録日 : 2011年12月30日
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