くっきりとした記憶のわきから靄のような記憶が割り込んできていつのまにかその輪郭は明確になり、そしてその間にも別の記憶が朦朧としたままどこからろもなく湧きだしてきて…ということを考える。
とてもあいまいで、いろいろと見聞きはしてきたし、それよりなにより(赤の他人にくらべて)長きにわたり実際に触れあってきたけど、知っている、とははっきりと言いきれない、父親のすがたかたち生きかたを、まわりくどい言い方を厭わずに書きつらね続けた(おそらく著者だったらここで「生きかた」なんて言いまわしは使いたがらないだろう)ことにつよい感嘆をおぼえるのである。
なにかをおもいだしているうちに、ふっと別のことがあたまをよぎり、つぎの瞬間にはそのことが頭のなかの大半を占めているというような、記憶のよみがえりかたがそのまま文章になったようで、そういう箇所に出くわすたびにゾクゾクしてしまう。とおもうのは自分だけだろうか。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2010年7月15日
- 読了日 : 2010年7月15日
- 本棚登録日 : 2010年7月15日
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